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2025年10月31日金曜日

休刊日のお知らせ FT新聞 No.4664

おはようございます。
本日は、タイトルのとおり休刊日です。

毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!

FT新聞編集部一同


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2025年10月30日木曜日

子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』5 FT新聞 No.4663

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子どもと遊ぶ『甲竜伝説ヴィルガストRPG』(5)

 岡和田晃
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※連載の第1〜4回を、Analog Game Studiesに再録していますので、未読の方はこちらからどうぞ、
https://analoggamestudies.seesaa.net/category/28133868-1.html

 他のメディアとRPGを分かつもっとも大きな点の一つに、「プレイヤーが能動的かつ主体的に参加しなければならない」というポイントが挙げられます。もちろん、読書や映画鑑賞なども、能動的かつ主体的でありうるのですが、それは概ね解釈や感情移入のレベルにおいてのこと。RPGにおいては、よりコミットメントのあり方が具体的かつ明確でなければなりません。
 子どもに限らず、不慣れな方とRPGをするとき、ここがもっとも大きな躓きの点になるかと思います。デジタルゲームの多くは、豪華なBGMやグラフィックが用意されていたり、あるいはチュートリアルが充実したりしていて、それと意識することなく、世界観に没入することができます。アナログゲームでも、ボードゲームやカードゲームの多くは処理が自動化されており、参加型の体験といっても「何をやるのか」はわかりやすい。どういう世界観なのかは、コンポーネントにしっかりと明記されています。
 RPGに発想が近い、ナラティヴ系のカードゲームを見てみましょう。『キャット&チョコレート』は、イベントカードに明記されたアクシデントを、手持ちのアイテムカードをヒントにしつつ、なんとかこじつけて回避するという内容の作品で、アイテムカードを何枚使うかはランダムなのが面白い作品です。8歳の娘ともよく遊んでいますが、この作品は「日常編」、「幽霊屋敷編」など、コンセプトに応じたバリエーションが存在します。「日常編」には小学生にはピンと来ないシチュエーションが多かったからか、「怖い」と言いながら、むしろ「幽霊屋敷編」の方を好んで遊んでいました。
 『ワンス・アポン・ア・タイム』ではどうでしょうか。美麗なイラストが添えられたカードを出していき、メルヘンのような話を紡いでいくゲームで、これはウラジーミル・プロップがまとめた魔法物語の構造分析を、そのまま落とし込んだような作品です。とにかくカード種類が豊富でヴィジュアル的なイメージから話を作り上げていくことができるので、こちらもすんなりとお話に入り込むことができます。

 ——それでは『甲竜伝説ヴィルガストRPG』の場合は?
 こうした「自動化のための仕掛け」はありません。初出時の1992年は、ちょうどこの年の9月に『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』が発売され、中世風ファンタジーの世界観は共通言語としてすっかり浸透していました。ところが、娘の通っている小学校は、海外であるため全校生徒が30人ほどしかいないことを措いても、『ドラゴンクエスト』を知っている子どもすら数名しかおりません。
 娘はいま、『ドラゴンクエストIII』のiOS版にすっかり夢中になっていて、これは娘が初めて、親が主導で進めるのではなく自分がメインで動かしてクリアできたコンピュータRPGなのですが、その話をしようとすると、同級生よりも先生たちの方が話は通じやすいのです。いまの小学校でもっとも遊ばれているゲームはダントツで『Minecraft』なのですね。
 娘はむしろ、『甲竜伝説ヴィルガストRPG』で遊んだようなシチュエーションが、『ドラゴンクエストIII』にも出てくることを後から発見して喜んでいるのです。ですから、プレイヤーの背景知識によって、「参加」が後押しされるという動機が持てないのです。TRPGの方が先、という意味では、一周回って黎明期のゲーマーたちと同種の体験をしていると言うことができるかもしれません。
 最初はキャラクターメイキングを行い、武器や防具のリストを眺めるだけで楽しめていました。そのことが、ゲームの「引き」になっていたのです。何度もルールブックを眺めていると、では実際にシナリオを遊んでみたくなるのが人の常。
 『甲竜伝説ヴィルガストRPG』には砂漠のピラミッドを舞台にした立体ダンジョン・シナリオが1本、「村を守れ」「脱出!」というシチュエーションと地図にモンスターを添えた遭遇集のような簡易シナリオ(あるいはシナリオソースか?)が2本、収められています。娘はなんと、駄目だと言われているのに、こっそりとプレイ前に内容を読んでしまいました(!)。だからといって、興を削がれるわけではありません。「シナリオの内容を知っていること」を、世界観に馴染むための推進力へ変えていたのです。
 これは危険なのではと思われる向きもあるでしょう。実際、SNSでは、事前にシナリオを読んできてしまうプレイヤーについての問題が何度も「炎上」しています。けれども、これは複数のプレイヤーを交えて、知っているプレイヤーが事前に内容を「ネタバレ」したり、自分だけが活躍しようと独りよがりなプレイをしたりしてしまうから問題なのです。1 on 1で遊び、とにかく世界観に親しむという段階では、大きな制約にはならないのです。
 このあたりは、伏見健二さんと相沢美良さんの児童向けRPG『ラビットホール・ドロップス』や、『ブルーシンガーRPG』が参考になるかと思います。これらのゲームでは、シナリオアートと呼ばれるヴィジュアルマップがすでに用意されていて、マップには「ネタバレ」になるようなことも描き込まれているわけですが、デザイン上、そのことが問題にならないよう、思い切った割り切りが行なわれているのです。
 子どもは同じ話を繰り返し聞きたがりますし、自分でも語りたがります。そこでは、「ネタバレ」したかといってインパクトを失うようなことはないのです。こうした反復の構造が強みであるのは、瀬田貞二『幼い子の文学』でも、るる語られていました。
 
 むしろ問題になるのは集中力の維持、プレイ時間です。経験上、1時間以上のゲームセッションを小さい子どもと行うのは困難で、30分でも厳しいところ。1時間以上にRPGに堪えられるのは、小学校高学年以上のことが多いように思います。
 私が子どもと『甲竜伝説ヴィルガストRPG』を遊ぶ際は、1回のセッションは30分ほどで終わるものとしていました。うち20分は、事前と事後のアイテム選定と成長作業です。うちの娘はこれが大好きで、自分が「参加している」「遊んでいる」という主体的な感覚を確認できるからのようですが、いざ実際のセッションは10分ほどで終わります。戦闘以外の行為判定は、基本的にすべて成功とし、2〜3種類のモンスターとの戦闘を交えて終わる、というもの。
 最近では、イベント等で「1回の遭遇と前後のシチュエーションに特化してRPGを体験してもらう」10分卓というのが出現しています。自分でもプレイヤーで遊んだことがありました。正直、これでRPGの醍醐味を味わい尽くせるかというと、そんなことはありえないわけですが、それでも、集中が途切れる前にゲームを切り上げられるという点では学ぶべき点がありました。子どもはわずか10分程度のプレイ時間でも、他の遊びやテレビ、お人形なんかに、すぐに気を取られてしまいます。そのときは落ち着いて、またセッションに戻れるようにする。戻れなければその日は取りやめて、また後日再トライする——くらいの気持ちでないと保ちません。
 私が子どもとプレイする際は、プリプレイとアフタープレイを子どもに委ね、かつキャンペーン・ゲーム形式にして連続したシナリオを遊んでヒキを作り、没入のための仕掛けを作ろうと腐心しています。
 RPGを遊んでいて、「このセッションは何から何まで本当に楽しかった! すっかり夢中になってしまった」と掛け値無しに思えることはめったにありません。むしろ、「なんとかお話を崩壊させずに落とし所へ持って行けた。よくよく振り返ってみれば、そう悪くなかったかも」くらいのプレイ感であることがほとんどです(特に小学校・中学校の頃は)。「そう悪くなかったかも」と思え、心のどこかに引っかかりをおぼえるくらいのほうが、かえって温かみがあって長続きをする……。かような不思議なジレンマがRPGにはあるのです。娘にも、大人になってから、「あのときのゲームはそう悪くなかったな」と、あたたかく回想してもらえるようなセッションこそを目指しています。

 ■書誌情報
 ケイブンシャの大百科別冊
 『甲竜伝説ヴィルガストRPG』
 ゲームデザイン:佐藤俊之(怪兵隊)
 出版社:勁文社
 1992年5月15日・絶版

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2025年10月29日水曜日

第11回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4662

第11回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。


ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加えたことで、また違った経験を積みながら、ミナの冒険は続きます。
今回はついに、ローズ家への再突入です。


【ミナ 体力点2/4 悪夢袋6/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 1枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
【精密】


●アタック02-9 ビバイア・ローズの日記

朝を迎えた。
夢魔の悪夢に打ち勝ったボクは、それなりの睡眠を取ることができた。

今日はこれからローズ家の館へと向かう。
準備は万全にしておこう。

ボクはこのときのためにとっておいた<時もどしの回復時計>を取り出す。
柔らかな緑色の時計。ボクがそっと触れると、針が動き始める。
秒針がちりん、ちりん、と風鈴のような心地よい音色を奏でた。
時計が逆回りすると、ボクの身体がほのかに光りながら、時をさかのぼっていく。
森に入ってからこれまでに受けた傷の数々は、すべて癒された。
不死化傷もすっと消えていった。

「不死化傷まで治せるなんて、キミの魔法はつくづく規格外だな」

フェルがそんな感想をもらした。
支度をし、朝食を食べながら、フェルが話し始める。

「ローズ家についちゃ、オレもあんまり詳しくないんだけどさ。実はオレのじっちゃんが、この館で働いてたんだ」

フェルの話によれば、現当主マルティン・ローズが若い頃に住み込みで働いていたとのこと。
森の中の時計塔の建築はその頃だそうで。フェルの祖父も関わっていたようだ。
その頃の当主は、まだ吸血鬼ではなかったらしい。

「ま、ローズ家とは、因縁ってほどじゃないけど、ちょっとばかし繋がりがあるから話しとこうと思って」

マルティン・ローズか。
これまで「館の主」とか「現当主」とかいう言い方ばかりされているので、名前を聞いたのはこれが初めてだ。
吸血鬼になる前のこの人がどういう人だったのか、まったく知らないけれど、どうして吸血鬼になっちゃったんだろう。

さあ、準備を整えたら、いよいよ館へ向かおう。
黒い外観の館は、朝陽に照らされてもなお不気味だ。
その黒い壁一面に、枯れたツタが這っている。
闇エルフの隠れ里もそうだったけど、この森は、建物を黒く塗らなきゃいけないっていう決まりでもあるの?

窓はすべて、木板が打ちつけられている。
吸血鬼の弱点、太陽光を建物内に入れないためだろう。

「ローズ家に今いる人数は少ない。ローズ姓を持つのは当主とその息子だけだ。妻は早くに先立たれ、娘は家を出ているらしい。あとは使用人がいる程度だな」

さて、正面から普通に客人として入るか、裏口から入るか、だけど。
ボクの目的からしたら、やっぱり裏口からこっそり、がいいかな。
人数が少ないのなら、発見される可能性も少ないってこと。

ボクたちは人気のない館を、裏口へと回り込んだ。
雑草などは、雑だけどそれなりに刈り払われていて、使用人が仕事をしているのだろうことはわかる。

ボクたちは裏の勝手口へ行く。
当然、ドアは施錠されているが、建てつけが悪く、すき間から棒を使って簡単に内カギを開けることができた。

中の廊下も無人で薄暗い。人の気配を感じられない。
ボクたちは廊下を進む。とある部屋に入った。

その部屋は広いつくりになっていて、中央に天蓋つきのベッドがあった。すみにはクローゼットと机。

「どうやらここが息子の部屋みたいだな」

けれど、誰もいない。息子は病気だって聞いていたけど。
ボクは机から、日記を見つけた。ビバイア・ローズという人物のものだ。

「息子がたしかビバイアって名前だった。やっぱりここは息子の部屋だな」

日記を読み進める。
日記は幼少期からずっと書きつづけられたもののようで、膨大だ。
しかし最近の日記は文字が乱れ、内容も支離滅裂になってゆく。
それでも、彼の思いをつづった部分は意味をなしている。

「吸血鬼になるくらいなら、どんなに苦しくてもこのまま……」
「姉さんに会いたい。どうしているのかな」

そして5日前。日記はそこで終わっている。

「日記が書けなくなった。今いないとこを見ると、まもなく亡くなった……ってことだろうな。彼なら当主よりは話が通じると思ってたんだが」

そうだね。これではビバイアに話を聞くことはできない。
今のビバイアには。

首にかけている<跳兎の懐中時計>の、かわいらしいウサギの意匠がくるりんと踊る。
ボクはその時計を手に取った。


●アタック02-10 <跳兎の懐中時計>の力

懐中時計を動かす。悪夢袋がふたつしぼみ、ボクの身体が過去に跳躍する。
これまでは、漠然とした時間にしか戻れなかった。けど、精密な時を刻む今の時計なら、意図した時間へと跳ぶことができる。

・幼少期以前
・病気にかかる前
・死の直前

生きている時のビバイアに会うといっても、死の間際で苦しんでいるところに行っても辛いだけかな。
だからって、幼い頃まで戻るのは、戻りすぎだと思う。もしかしたらフェルのおじいさんに会えるかもしれないけど。

ボクは、病気にかかる前まで時間をさかのぼった。

<跳兎の懐中時計>は時間を越えるけど、場所は動かない。
ウサギが跳ねるオルゴール音で針が動き、目の前の風景がかちっと切り替わる。
場所は変わらず、ビバイアの部屋。風景には大きな変化は見られない。

けれど、ボクの目の前に、背の高い少年がいた。
彼には、ボクが突然現れたように見えたことだろう。あ然としている。

「今、急に現れた……? あなた、何者?」

この少年、きっとビバイアだ。
会えた。
会えたはいいけど、どうしようこの状況。
どう考えても、この館のことを聞けるシチュエーションじゃない。
未来から来た、なんて言って信じてもらえるはずもない。

なら……。

「ボクは予言者。君の未来にたちこめる影について警告に来た」
「警告だって? うさん臭いな。かといって、父さんの客じゃなさそうだし」
「君はやがて、病に倒れる。特別な聖水を求めなさい」

ビバイアの表情が険しくなった。

「何が目的だ?」

答えようと口を開く。その時、くらっとする感覚が。
時間遡行はここまでみたいだ。目の前の風景が切り替わる。
ビバイアからしたら、ボクが急に消えたように見えたことだろう。
超常的な何かを感じて、耳を貸す気になってくれればいいけれど。

そんなことを思いつつ現在に戻ると、目の前にビバイアが立っていて、今度はボクがあ然とした。

「先生、また来てくださったんですね。お会いできて光栄です」

ビバイアも、ボクの突然の登場に驚きながらも、そんなことを言い出した。
ボクにとっては、さっき見たばかりの過去のビバイアの続きだから、豹変もはなはだしい。

「あの後、犬に噛まれたことが原因で、結局病気になってしまったんです。でも先生の言葉のおかげで効き目のある聖水を手に入れられたんです」

そ、それは良かった、ね。
見ると部屋には、前になかった聖水の小瓶が、たくさん並べられていた。いろいろ試したのだろう。
聖水は吸血鬼にとっての弱点のひとつ。ボクの助言がなければ、手に入れることはできなかったに違いない。
ボクは、過去への介入が人の生死にかかわる歴史まで変えてしまったことに戦慄した。
<跳兎の懐中時計>のこの力は、あまりにも大きすぎる。

フェルにはこの状況、どんな風に見えているんだろう。
驚いた表情で固まっているフェルを見ながら、そんな風に思う。
ビバイアの生死が、歴史が変わった受け止めはできているんだろうか。

現在でビバイアと話ができることになったので、いろいろ聞くことができるようになった。
ボクは、姉たちがここに買われていったこと、取り戻すためにここまで旅をしてきたことを伝えた。

「先生のお姉さんたちが買われたとしたら、きっと私のせいです。父は、私とは違うアプローチで、私の病気を治そうとしていました。新鮮なエルフの血を欲していたんだと思います」

じゃあ、ビバイアが快癒したことで、姉たちが死ぬ必要はなくなったということなのかな?
ボクは、そんな淡い期待をしてしまう。

「わかりません。聖水の効果は、ようやく出始めたところなんです。父とはほとんど会話がないから、わかっていないかも」

そうか。あまり楽観できないことはわかった。
ビバイアに、姉たちの居場所の心あたりを尋ねる。ビバイアは答えた。

「もし館の中にいなければ、ゴルジュにいるのかも」

ゴルジュ?

ビバイアによれば、森の中にある渓谷とのこと。
陽の光が届かない場所のため、父がよく行っている場所なのだそうだ。
ビバイアは、渓谷への行き方を教えてくれた。このことは覚えておこう。

「ところで、ビバイアはこれからどうするの?」
「体がもう少し良くなったら、この館を出るつもりです。私は父の意に反して、吸血鬼になることを拒絶し続けてきました。父の影響の及ばないところで生活したい。そしてできることなら、館を出ていった姉さんに会いたい。ボラミー姉さん、今どこにいるんだろう」

ボクは、ボラミーという名前に記憶が刺激された。けれど、はっきりとは思い出せなかった。

「そう。会えるといいね」

長年離れていても、きょうだいが会うというのは特別なことなのだ。
ボクは、エナ姉、ティナ姉と、ほかの姉たち全員の顔を思い浮かべた。

ビバイアは、まだ体力を取り戻していないため、ボクたちと同行はできない。
ボクたちは、ビバイアと別れ、館の捜索を続けることにした。


●アタック02-11 姉のゆくえ

フェルに、ビバイアの部屋の出来事の感想を聞いてみた。

「会ったこともないはずのビバイアに、『先生』って呼ばれるなんてな。キミの、そのとんでもない魔法でなんかしたのはわかるけど、何をやったのか、まるでわからん」

そんな返答だった。
つまりフェルは、ビバイアが死亡して無人だった時の部屋のことは、まったく覚えていなかった。
覚えていないというよりも、そんな経験をしていない、というのが正しいのだろう。

今のフェルは、ビバイアが生きていた世界のフェルなのだ、と思った方が良いかもしれない。

気をつけないと。

過去を変えすぎると、今への影響ははかりしれなくなる。
たとえば、もしビバイアの治癒がもっと早かったり、そもそも病気にならない改変をすれば、姉たちはここに買われることがなくなるだろう。
そうなると、姉たちの命の危機はなくなるかもしれないけれど、居場所は一から探しなおしになる。

ボクたちは、地下へと降りていった。
地下はワイン蔵になっている。けどボクは、ここに秘密の拷問部屋があることを聞いて知っている。
壁を叩き、空洞を見つける。

「初めて来たとは思えない手際の良さだな……と、ここじゃないか?」

フェルが秘密の入口を見つけた。
開けるとそこは、噂どおりの拷問部屋だった。
赤黒い血の跡。生活臭。まだ新しい。

「うわ。ひでえなこりゃ」

フェルも顔をしかめてしまうひどさだ。
ここで最近血を流したのは誰か。もちろん、ボクの姉たちに決まっている。
姉たちは、ここで吸血鬼に、生きたまま血を抜かれるような、恐ろしい目に遭ったんだ。

無言で拷問部屋を出る。
フェルも、ボクにどう接していいものか、途方に暮れているようだ。

「まだ気を落とすにゃ早いぜ。姉ちゃんを見つけなきゃな」

元気づけようとしているのはわかる。
けど、あの部屋の様子では、姉たちの生存は絶望的だ、とフェルも感じ取ったに違いない。
だから、まずは姉を探すという提案は、絶望を先送りにしているだけに聞こえてしまった。

「しっかしワイン蔵とは、いい趣味してるぜ、ここの吸血鬼は」

フェルが何気にワイン樽のコックをひねる。
すぐにその声が深刻なものとなった。

「おい、これはワインじゃない。……血だ!」

嫌な予感がした。フェルと協力して樽を開ける。
悪い想像が止まらない。そうであってほしくない。

しかし、そこにあったのは冷酷な現実。樽の中に丸まっている、血だまりの中のティナ姉の遺体。
さしものフェルも、言葉も出ない。

ボクはすぐさま<跳兎の懐中時計>を手に取った。
ティナ姉を取り戻す方法は、もうこれしかない。

「おい、何をするつもりだ」

ボクはきっと、鬼気迫る表情をしていたに違いない。

「ティナ姉を取り戻してくる。……絶対に!」

強い決意を持ち、時計を動かす。
悪夢袋はあと3つ。この跳躍では2つ使う。
つまり、チャンスは一度きりだ。

跳ねる兎が動き出す。
いつまで時をさかのぼればいい?

5日前? 10日前? それよりもっと前?

5日前は、もともとビバイアが死んでいたはずの日だ。だから、エルフの生き血はそれより前に必要としていた。
闇エルフの一団がここに姉たちを送り届けて、ネルドで酒盛りをするまで。そこからボクが出発し、ここにたどり着くまで。

よし。決めた。

ボクは、10日前に跳んだ。
風景が切り替わる。ワイン蔵だけど、血のワイン樽はない。フェルもいない。
10日前のワイン蔵だ。

よかった。ティナ姉は、まだ死んでいない。
なら、どこにいるか、ボクはもう知っている。
ボクは、秘密の拷問部屋への隠し扉を開いた。

ティナ姉が、そこにいた。
縛られて、猿ぐつわをかまされ、薄汚れていたけれど、まだ、血を抜かれていない。

時間はあまりない。ボクは急いで、ティナ姉の拘束を解いた。

「ミナ? ミナなのね?!」

ティナ姉は、肌の色が変わっていても、10年以上会っていなくても、すぐにボクだとわかってくれた。
ボクは泣きながら、ティナ姉を強く抱きしめた。


次回、吸血鬼との対決のとき。


【ミナ 体力点2→4/4 悪夢袋6→5→3→1/7】
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<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
【精密】


■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。ミナの行動で死の定めから逃れた。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。


■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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2025年10月28日火曜日

『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(1)  FT新聞 No.4661

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『モンセギュール1244』リプレイ〜友達んち編(1)

 (明日槇 悠)
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◯はじめに


この度、訳者の岡和田晃氏及び版元であるニューゲームズオーダーの寛大な許可により、新たに『モンセギュール1244』のリプレイを連載させていただける運びとなりました。

『モンセギュール1244』とは、2009年に原著が発売され、2023年6月に日本語版が上陸したナラティヴ・スタイルRPGです。
その特徴は、TRPGには欠かせない存在であるゲーム・マスターが不要で、プレイヤー同士の協力によってナレーション権を交代しながらストーリーが織りなされること。
そして、カタリ派という中世ヨーロッパ最大とされたキリスト教異端派を題材にするということです。
プレイヤーは、この異端の信徒たちによるコミュニティで起きた戦時下の物語を紡いでいきます。

FT新聞では既に、2023年9月〜2024年10月にかけて、岡和田氏の筆になる中世主義研究会の面々によるリプレイを連載しております。(FT新聞 No.3893〜No.4271)
そのアーカイブは現在でも閲覧することができます。
https://prologuewave.club/archives/category/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB1244
『モンセギュール1244』についてより詳しく知りたい方は、上記リンクより「『モンセギュール1244』がやって来た、ヤァ! ヤァ! ヤァ!」(「FT新聞」No.3809)や「『モンセギュール1244』プレイガイド〜準備編〜」(「FT新聞」No.3865)も参照されるといいでしょう。

「〜中世主義研究会編」と題されたリプレイは、錚々たる研究者の方々が、確かな知識に裏打ちされたカタリ派のロールプレイを披露される点で画期的でした。
オンラインセッションの快適に行えるゲームであることも示されましたが、一方で、歴史科目に自信のない私を含め、ゲームにとっつきにくい印象を拭えなかった読者の方もおられるのでは。

今回お届けするのは、筆者の私を含めたTRPG初心者4人が、タイトル通り、『モンセギュール1244』を遊ぶために友達のお宅へ集合して、
ゲームといっしょに酒やツマミも展開しながら、プレイに参加しない住人も行き交う畳の上で対面セッションをおこなった2025年4月末の記録です。
このリプレイが高ハードルな印象を打ち砕き、ノリで進行可能な遊びやすいゲームであることの理解を促す一助になれば幸いです。

なお、本作は信仰等に関する繊細なテーマを扱っています。ロールプレイ上、現代の倫理観を欠いた表現をするところが多々ございます。
そうした表現にご不快を覚える方、それを予測された方は、その段階で当記事の閲覧を中止されますようお願いいたします。


◯大まかなゲームの流れについて


座組のうち、いちばん張りのある声のプレイヤーから手番をスタートさせます。(以降、時計回り。声の大きさ順という訳ではありません)
本作は、ナレーション権を持つ手番プレイヤーがゲームマスターかのように「シーン」を演出し、終了後、次の手番プレイヤーにナレーション権を回すことで進行していきます。
手番プレイヤーは、場札である3枚の「シーンカード」から1枚を選択し、その文面も参考に「シーン」を描写します。
「シーンカード」を読み上げた後、プレイヤーはこれを自分の手札として取っておくことができます。
自分の手番じゃない「シーン」の途中で、手札の「シーンカード」を出すことで、その場のナレーション権を奪取することができるのです。

いくつかの「シーン」をまとめて「アクト」という単位が構成されており、「アクト」は以下の流れとなっております。
「プロローグ:アヴィニョネの暗殺」「アクトI:包囲開始」「アクトII:過酷なる冬」「アクトIII:運命の決戦」「アクトIV:陥落」「エピローグ:棄教か、それとも殉教か」

なお、「シーン」終了時に手番プレイヤーは、人物や、アイテムや、イベントといった役割を兼ねた「ストーリーカード」を引くことができます。
ストーリーに変化や緩急をつけるための要素が記されているそのカードは、アクトII、アクトIII、アクトIVにのみ使用することができます。
そういうルールなのですが、このリプレイにおいて、プレイヤーたちは「ストーリーカード」の存在を失念しているため、このカードはほとんど活かされません。
これに限らず、当リプレイではルールを正確に守れていない点が見受けられますが、それでも破綻しない寛容なゲームシステムとしてご理解いただければと思います。

プレイヤーは、キャラクター一覧の中から、少なくとも主要キャラクター1人、支援キャラクター1人を担当します。
キャラクターにはそれぞれ「3つの質問」が用意されており、この質問を元に、プレイヤーは担当キャラの肉付けをおこない、
プレイ終了までに少なくとも担当する主要キャラの質問にはすべて答えを出さなくてはなりません。

キャラクターの一覧や関係性については、ニューゲームズオーダー公式サイト内の「登場キャラクター」表を参照すると分かりやすいかと思われます。
https://www.newgamesorder.jp/games/montsegur1244


◯プレイヤー紹介


Kei 構成作家。本文中のA。
木野誠太郎 小説家・ゲームシナリオライター。本文中のB。
明日槇悠 FT新聞編集部員。本文中のC。
小山 フォーエバーヤング。本文中のD。


●本編


A「(ルールブックを確認して)みんなは最後に生き残ったカタリ派っぽいわ。異端審問団と軍とに狩られてトゥールーズ伯の庇護がなくなった、最後の最後まで生き残ったクレイジー共。
プロローグ【アヴィニョネの暗殺】は、アヴィニョネっていう小さな町の領事代官(バイイ)のアルファノってやつが、教皇様の手下ですよ! って言いながらも実はカタリ派の敬虔な信者らしくて、それがフランス領にばれちゃって、異端審問官のギョーム・アルノーが『お前カタリ派かばってんだろ! やっちゃうよ?』ってアヴィニョネに来るっていうから、この代官が誰かを使って異端審問官のアルノーを殺せばいいんじゃね? ってところから始まる。
ピエール・ロジェがその暗殺者として異端審問官に襲いかかるとしてプレイするらしい。ベルナールはアルノーを殺すことによって復讐とかにのめり込むのか、異端審問官は事前に暗殺計画は把握してて回避するのか、殺されるのか。カタリ派の信者たちはアルノーなんて殺しちまえって思ってるのかがポイントらしい。で、このプロローグは俺がナレーション権を持つ。スタートプレイヤーなので。

■プロローグ アヴィニョネの暗殺 1242年5月

 じゃあ、アヴィニョネから5km離れた地点で今、異端審問官のギョーム・アルノーが夜泊をしていると。キャンプから起きて朝、アヴィニョネに来るらしい。それまでにアルノーを殺さなきゃいけない。町の中で殺すと大騒ぎになるから。夜泊している時に、『盗賊でも出たんじゃない?』って体で殺さなくちゃいけないから、ピエール・ロジェ率いる兵士団がアルノーのキャンプを襲おうとしている。

 (シーンカード)【雨が降り続いて生じた泥だらけの水溜り】を馬の蹄が水しぶきをあげる。今まさに、ロジェを先頭にした武装兵士団50人が異端審問官ギョーム・アルノーの夜泊テントを襲おうとしている。じゃあ、俺、ロジェ演りますわ」
C「ベルナールがその後ろについていく、と」
B「領主のレーモンはついていっていいんですかね?」
A「いいんじゃね?」
D「襲撃部隊にさすがに女性陣はついて行かないか……」
A「実はこっそりついて来てたとか」
D「別について行かなくてもいいですもんね。まあ静観してるかな」
A「じゃあ、『おらッしゃあァァァ!』とロジェが言って、ギョームは死にました。シーン終了っす。異端審問官の暗殺に成功した、というところでプロローグを終わらせる。

 はいみんな、誰を演じるかを決めましょう。俺、ベルトランで。謎がおもろい。ちなみに主要キャラの質問3つには必ず答えを出さないといけないらしい」
B「自分はレーモンで」
C「なら、レーモンの娘のエスクラルモンドかな」
D「俺は娼婦のアルセンドにしますよ。ロジェと寝る人」
C「アルセンドなら、こっちはベルナールという手もある」
D「色んな奴と寝てるからな」
A「じゃあキーマンじゃん。異端審問官のギニョさんなんかナレ死しちゃったんだから」
C「その暗殺に同行してる間に異端審問で死刑宣告されてたベルナールにするかも」
A「可哀想に」

■Act1.包囲開始 1243年5月
 ——モンセギュールでの戦いが始まった。山頂からは敵勢がはっきりと見える。十字軍が山裾に集結しているのだ。

A「つまり暗殺の結果如何に関わらず、成功したけど結局アヴィニョネを追われてモンセギュールまで全員追い詰められたってことね」
B「自分が手番プレイヤーになると。シーンカード、【山の端をかすめる雲】。
 
 異端審問官の殺害から一年、モンセギュールの領主レーモンは、城塞を包囲する十字軍の数を見ながら余裕を持った表情で戦局を見張り塔から見守っていました。

Bレーモン「どうやらこの感じだと、十字軍は撤退せざるをえないであろう」

 とても楽観し、彼は、見張り番の役に就いている者に激励をし、自分の家へと戻っていきました」
C「娘なので、会話シーンを作るか。それは夜のことですかね」
B「そうですね」
C「レーモンの娘のエスクラルモンドは、夜になると南方を見つめています。こいつはピエール・ロジェの妻であり姉のフィリッパをなぜか妬んでいる。
 エスクラルモンドは城塞から南方を見つめながら、領主のレーモンが通りかかったところで『お父様、あれはなに?』と声をかけます。幻覚なのか、天から火が降り注ぎ、それが神の軍の形をとって、こちらへ向かってくるのが見える。

Cエスクラルモンド「あれは私たちの味方なのでしょうか? だって私たちは正しい信仰を持っているのですもの」

 と父に訴えます」
B「レーモンは娘の言うことに『そうだよ』と言いながらも、内心では娘が幻覚を見ていることに勘づいており、それは全く信仰教義とは関係ないことなので、きっと彼女は城塞の退屈な生活に飽きており、今の平和でない状況に対してストレスが溜まっているのだろうと思い、彼女に早く寝るように勧めました」
C「大人しく寝室に向かうことでしょう」
B「レーモンが部屋に戻ろうとしている際に、レーモンに話しかけてきた人物がいました。それは一年前に異端審問官を殺害したピエール・ロジェでした。彼は防衛指揮官を勤めているので、おそらく十字軍が次に攻撃を仕掛けてくるのは、翌朝、明るい時期だと思っていたので彼に戦局について伺いを立てました」

Bレーモン「十字軍の様子はどうなっている?」

Dピエール・ロジェ「ちょっといま不穏な状況ですね。若干、不穏な感じはしております」

B「不穏な感じとはどういうことを指しているのか、レーモンは心配になって聞きました」

Dピエール・ロジェ「風の知らせ、を感じてますね……やな予感がしているので。でもまあ、これ直感なんでそんなに真に受けなくても大丈夫です」

C「楽観的な指揮官……」
D「感覚派なんですよ、彼は」
A「【雨が降り続いて生じた泥だらけの水たまり】(シーンカードを出してナレーション権奪取)。レーモンがピエール・ロジェと会ってから一日後、ベルトランはレーモンと二人で会っていた。

Aベルトラン「なるほど。ピエール・ロジェはそんなことを言っていたか。あいつは錯乱している可能性がある。(一同笑)指揮官にしては話がグッダグダすぎる。レーモンはロジェをよく見ておいたほうがいい。
 それにレーモン、前から話しているが……ベルナールは異端審問にかけられて死刑に決まった。でも異端審問官は暗殺したはずなのに、アヴィニョネの町に既に異端審問官がいた。ということは、異端審問官を秘密裏に引き入れた者がいる。もちろん私じゃない。私がレーモンに異端審問官を殺害しろという提案をしたから。殺して肉体を再生した方が魂を浄化できて我々の教義に合っているわけ。ということは、この城塞内に異端審問官、教皇側についている人間が絶対にいる。それを誰か、特定したいなァー。私は。特定したいなー。私。完徳者《ペルフェッチ》だから。そこらへんは色々……考えとくわ。ちなみにレーモン、誰だと思う?」

Bレーモン「自分としては、城塞の中には犯人はいないと考えている。というのもベルナールが異端審問官から死刑を宣告されたのは、異端審問官殺害の実行役だと目されていることが向こうに伝わっているからなのではないか。つまり、殺害したと思った異端審問官は実は影武者で、一年前の事件では本当は遂行しそこなっていたのではないか」

B「もちろんレーモンはベルトランには言わなかったけれど、内心ではこのモンセギュールに問題を持ち込んでほしくないと思ったから、保身のために確証はないけれどそう信じ込んでいるところもある」

Aベルトラン「レーモンレーモン! ワトソンくん! だが一つ問題があってェ、ベルナールが異端審問官暗殺で留守の間にベルナールの死刑が決まっているから、異端審問官を暗殺できたかどうかの結果如何に関わらずその時点でベルナールは異端審問官暗殺の罪で捕まっている。ということは、異端審問官が殺害される前から彼の罪は異端審問にかけられていたので、内通者がいないと、おかしいのだよ! レモンくん! だからわしは内通者がいる説を捨てられない。あと、ロジェがあやしいと思う。めっちゃロジェがあやしいと思う。一年経ってんのに、未だにベルナールは死刑にならない上にロジェの女と寝ているから、絶対ロジェ」

D「確かに」

Bレーモン「ベルトランの言うことを信じよう。彼には隠れて見張りをつけておく」

Aベルトラン「ウゥエ! チャンスあったら、死刑にしよ。あーはー、肉体をね、再生させたほうがいい。不浄な魂、浄化するために肉体を滅したほうがいい。あとベルナールだけじゃなく、子供に見張りをつけなさい。悪魔なので」

D「子供ってこれ?(アミエルとファイユ)」
A「そ。子供は正しい判断ができない悪魔で、こちらが正しい道に導いてやらないと人としての道を歩めない。人間ではないので」
D「それは言い過ぎじゃないですか?」
A「という教義なの!(笑) というキャラなの! 俺の意見じゃないの! ベルトランがそう言ってるの! そうしてその日は終わった。で、シーンを終える」


◯Act1.包囲開始(後編) に続く……


●登場人物/※3つの質問 (※「◯大まかなゲームの流れについて」後半部参照)

ベルトラン・マーティ……年配の男性。完徳者《ペルフェッチ》。カタリ派信者たちの精神的な指導者。出家する前は羊飼いだった。
 1. あなたの言葉を信仰に裏打ちされた啓発的なものにしている要因は何か?
 2. あなたが自分の信仰を疑うのはどんなときか?
 3. ベジエの街が陥落したとき、あなたはどうやって生き延びたのか?

レーモン・ド・ペレーユ……モンセギュールの領主。この中年男が、現在の城塞を建てた。ピエール・ロジェのいとこでコルバの夫、フィリッパとエスクラルモンドの父。
 1. あなたはモンセギュールをカタリ派の根城としたことを後悔しているか?
 2. あなたの左脚は、なぜこわばっているのか?
 3. あなたが愛し、もっとも大事にしているのは誰か?


■作品情報

・Montsegur 1244(モンセギュール1244)
 Frederik J. Jensen (フレデリック・J・イェンセン) 著 / 岡和田 晃 訳

モダン・ナラティブRPG
3〜6人用〔ゲームマスター不要〕/ ゲーム時間3〜5時間 / 15歳以上向

・ボックス版 税込3300円 ※電子書籍版同梱
 https://booth.pm/ja/items/4828050
・電子書籍版 税込1100円
 https://newgamesorder.booth.pm/items/4902669


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2025年10月27日月曜日

スティーブ・クロンプトン来日! FT新聞 No.4660

おはようございます、梅田のタリーズから杉本です☆
一気に寒くなりましたね……私は服装の切り替えが遅れて一瞬体調を崩しかけましたが、よく寝て立て直しに成功しました。
今日は、今までにあまりしたことのないお知らせです。


◆ケンとクロンプトン。
トンネルズ&トロールズのオリジナルデザイナーであるケン・セント・アンドレが制作、FT書房が翻訳、展開するTRPG「モンスター!モンスター!TRPG」関連のお知らせです。
ケン・セント・アンドレとともにこの「モンスター!モンスター!TRPG」を出版するスティーブ・クロンプトンが、このたび、なんと来日します!
日時は2025年11月28日(金)。
場所は大阪と京都です。


◆スティーブ、世界一周してるんだってよ。
クロンプトン氏は世界一周クルーズの途中で日本に立ち寄るそうで、「ファンの皆様に会えることを楽しみにしています」という主旨のメッセージを、いただいております☆
船は朝の9時に大阪南港に到着して、夕方の17時に出発するとのこと。
この8時間で、京都を観光して、大阪でランチを食べ、ファンとの語らいの時を過ごしたいというお話です。


◆来られるあなた、ご連絡をください!
英語の通訳ができて、京都案内ができて、大阪の飲食店をそれなりに知っていて、ファンとの架け橋になれる人間……私に白羽の矢が立ちました。
私も、私が適任だと思います。
たとえばですが、観光は伏見稲荷で、ランチは寿司で、語り合う場所は和室。
ランチと和室代を含めて、1人あたり3000円から5000円ぐらいいただくようなプランで考えています。
平日なので、おそらく簡単には来られないかと思いますが……楽しく盛り上がれたら最高ですね☆
まずは参加の仮希望を募って、キャンセルありの募集をかけさせてください……2025年11月3日(月)までに、FT書房宛てにご連絡をお願いします!
おたより、またはツイッター(現X)のDM( @sugimotojohn)にてお寄せくださいませ。

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最後に、クロンプトンからのメッセージを掲載いたします……岡和田さん、翻訳ありがとうございます!


◆クロンプトンから、来日に寄せて(翻訳:岡和田晃)
ケンと私は、日本で行なわれているファン活動の広がりに大きな敬意を払っています。FT書房の熱意から始まった「トンネル・ザ・トロール・マガジン」掲載作をセレクトして英訳した本『T&T Adventures Japan』の編集を皮切りに(ええ、アメリカでこの本を実現させたのは、私のアイデアだったのですよ)、いまでは『モンスター!モンスター!TRPG』のプロジェクトで、皆さんのなかで協働できるようになったかたもおいでで、たいへんうれしく思っています。来たる2025年の11月28日、午前9時から午後5時頃まで、私は京都・大阪に滞在を予定しています。皆さんのなかで、この機会にお目にかかれる方がいらっしゃれば、ぜひお会いしましょう。ノルウェージャン・クルーズ船で到着予定でして、この日は一日、皆さんのために予定をあけています。そこで合流しませんか。おしゃべりをしたり、コレクションを交換したり、観光したり、あるいはズィムララのさらなる秘密を明かしたりしてしまうかもしれません。ファンでいてくださる皆さん、本当にありがとうございます。そして『モンスター!モンスター!TRPG』が遊ばれるコンベンションを、どうか楽しんでください!

アーティストにして嵐を呼ぶ男、スティーブ・クロンプトンより




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2025年10月26日日曜日

Ψ『海底の記憶』 日曜ゲームブック FT新聞 No.4659

おはようございます。FT新聞編集長の水波流です。
皆さん、森梟夫(もりきょうふ)先生を覚えておいででしょうか。
2023年6月18日のFT新聞で、私と合作で『魔法王国の再興』というゲームブックを執筆された、非実在作家です。
当時はChatGPTの出始めで、AI作家として実験的にファンタジー作品を書いてもらいました。
文章は軽々と執筆してくれるのですが、パラグラフ分岐や整合性は結局編集者である私がほとんど手作業で行う事となり、結構しんどい合作になったのを覚えています。

それから2年半……。
世間にはAIツールが沢山増えました。
X(旧Twitter)にGrok2というAIが搭載されたときに、私の好きな大正クトゥルフを森先生に書いてもらったのですが、パラグラフ分岐はお任せでほぼ問題なくなったものの、まだまだ大正時代の雰囲気ある文章は苦手な様子。
それでは、と、考えました。
既に米国ではパブリックドメインになっているラヴクラフト作品であれば、森先生の電子頭脳にも蓄積された知識があるのではないでしょうか。

さぁ森先生、2作目を書いて下さい!
言っておきますが、今回、私は文章の手直しもパラグラフ分岐の修正もしませんからね。
前回長かったから、今度は短編で行きましょう。30パラグラフでまとめて下さいな。
ほら、今すぐ!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
『海底の記憶』

 著:森梟夫
 監修:水波流
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

1
1926年、マサチューセッツ州アーカムの港町は、鉛色の雲と潮の匂いに包まれていた。霧が港を覆い、灯台の光も霞んで揺らめく。小舟を波止場に係留し、あなたは岸に足を踏み入れる。潮の匂いと古びた木材の匂いが入り混じり、港の倉庫やギルマンハウスの明かりが霧の中にぼんやり浮かぶ。夜の帳が町を包み、どこかで海底の存在がこちらを見つめている気配がする。胸の奥で、不安と期待が奇妙に交じり合う。

ギルマンハウスに向かう → 2
港の倉庫を探索 → 3
小舟の整備を確認 → 4

2
港の傍の古びた酒場の扉を押すと、煙と酒の匂いが混じった薄暗い空間が広がる。カウンターには老人が一人、目を細めてあなたを見つめている。その目は深海の闇そのもので、瞳孔の奥に渦巻く光景が、常人の理性を軋ませる。彼は低くかすれた声で語りかける。「深き海には、我らの理解を超えた都市がある…」その響きは耳ではなく、脳の奥底に直接流れ込むようだった。

老人に話を聞く → 5
酒場の他の客に情報を求める → 6
話を遮って別の場所を探索 → 3

3
港の倉庫に足を踏み入れると、古びた木箱や青白く光る小箱が散乱している。微かに震える巻物や水晶が、深海都市ルルイエの幻影を指先に浮かび上がらせる。倉庫の奥は不自然な暗がりに沈み、遠くから水滴が石を打つ音が響く。その音に混じって、人間のものではない呼吸音が微かに聞こえた気がした。

小箱を調べる → 7
巻物を解読 → 8
倉庫の奥へ進む → 14

4
小舟の整備を確認していると、霧の中に海面がかすかに揺れる影を見つける。青白い光が波間に浮かび、未知の存在がこちらを見つめている。胸に戦慄が走る。冷たい風が頬を撫で、古代から続く呪詛の囁きが波に乗って聞こえた。

小舟で港外へ → 9
港周囲を観察 → 16
波に足を取られる → 14

5
老人は低く語る。「神殿跡の周囲には、深海の力を映す古代文字が刻まれている。好奇心が過ぎれば…」声が途切れ、背後の闇がざわめく。そのざわめきは、遠い海底で無数の触手が動く音にも似ていた。

神殿跡の外縁へ → 10
港に戻り倉庫探索 → 3
老人の話を詳しく聞く → 6

6
他の客は酒と煙に沈み、表情を変えずに座る。だが一角で微かに光る紙片が目に入り、古代文字の断片かもしれない。その紙片は見るほどに形を変え、意味のわからぬ象形が生き物のように蠢く。

紙片を手に取る → 8
無視して神殿跡へ → 10
酒場で他の客の動きを観察 → 2

7
小箱を開くと、内部から塩の結晶とともに奇妙な紋章が刻まれた金属片が現れる。その表面には、海底の暗黒にしか存在しない生物の姿が微細に彫られていた。指で触れると、冷たさの奥から耳鳴りが広がり、海の底へ引きずられる幻覚に襲われる。

金属片を持ち帰る → 11
放置して巻物を調べる → 8
倉庫の奥へ進む → 14

8
巻物を開くと、インクは海藻の緑色を帯び、描かれた図形は規則正しいはずの幾何を裏切る歪みを孕んでいた。読むほどに、文字がこちらの心を覗き返してくる感覚が強まる。やがてあなたは、自分が誰であったかの境界を見失いそうになる。

文字の解読を続ける → 12
危険を感じて閉じる → 3
古文書と照らし合わせる → 15

9
小舟で港外へ漕ぎ出すと、海霧の帳が世界を閉ざす。水面は鏡のように静まり返り、ただあなたの櫂が波紋を刻む音だけが響く。やがて海中に、都市の輪郭のような黒い影が揺れ、低く不協和な振動が船体を通じて骨にまで伝わってくる。あなたは深海からの呼び声に包まれる。

影に近づく → 18
港へ引き返す → 2
水中を覗き込む → 14

10
神殿跡は岩と珊瑚に覆われ、半ば海に沈んでいた。崩れた石柱には螺旋や眼を象った模様が刻まれ、視線を逸らしてもなお脳裏に焼き付く。潮騒の奥からは、聞き取れぬ祈りの旋律が流れ出ていた。

神殿の内部へ → 19
外縁を探索 → 20
港へ戻る → 2

11
金属片を持ち帰ると、夜ごとに夢が変容する。夢の中であなたは黒い海を漂い、月明かりのない空の下、塔のような構造物が浮かぶ都市を目にする。その塔の窓から覗く無数の眼が、あなたを値踏みしていた。

夢を記録する → 21
老人に相談 → 5
金属片を封印する → 3

12
文字を解読すると、言葉ではなく音楽のような響きが脳裏に満ちる。その旋律はあなたの鼓動と同調し、周囲の影が形を持ちはじめる。現実が軋む音が耳を打ち、やがてあなたは倉庫の外ではなく、石造りの広間に立っていた。

広間を探索 → 22
その場に留まる → 14
元の世界に戻ろうとする → 3

13
港に近い路地裏に足を踏み入れると、建物の壁は海藻と貝殻に覆われ、足元には冷たい水が溜まっている。奥に進むにつれ、空気は重く粘り、遠くで水音とともに何かが這いずる気配が近づいてくる。

奥へ進む → 23
引き返す → 2
声をかけてみる → 14

14
あなたの視界が暗転し、冷たい水が全身を包み込む。光はなく、上下も失われ、ただ圧迫感だけが魂を締め付ける。目の前には無数の影が蠢き、触手の渦が闇に広がる。鼓動は海の奥深くに吸い込まれ、耳には遠くで囁く異形の声が届く。身体は宙に浮き、時間の感覚は消え、あなたは永遠に深海の夢に囚われてしまう。最後に見たのは、巨大な影が触手を伸ばし、混沌の中で渦巻く光景だった。あなたは何度も夢の中で目覚めようとするが、深淵の都市は決して手放さない。
BAD END

15
古書店の裏部屋で見つけた革装の本は、表紙に名も知らぬ言語で書かれていた。ページをめくるたび、海底の風景が立ち上がり、潮の匂いが現実にまで滲み出す。指先が震え、紙面に刻まれた言葉が呼吸を始める。

本を読み進める → 24
本を閉じる → 2
本を持ち出す → 25

16
港の外れで見つけた洞窟は、内壁に青白い燐光が走り、無数の紋様が脈動していた。奥から吹く風は海の匂いを運び、同時に古代の腐臭を漂わせる。

奥へ進む → 26
洞窟を後にする → 2
紋様を調べる → 27

17
教会跡の廃墟は、十字架が全て逆さまに吊られ、石壁には見知らぬ魚類の姿が彫られていた。床には潮だまりがあり、その中で何かが蠢く。鐘楼の上からは、不気味な揺りかご歌が聞こえた。

鐘楼へ登る → 28
潮だまりを覗く → 29
廃墟を離れる → 2

18
影に近づくと、水面がゆらめき、下方に沈む構造物が姿を現す。巨大な尖塔が海底から天を突き、その壁面は螺旋状の彫刻と、無数の眼を模した浮き彫りで覆われていた。潮流の囁きは、あなたの意識に直接語りかける言葉へと変わり、深海へ誘う。

尖塔の基部を調べる → 30
周囲を回る → 19
港へ戻る → 2

19
神殿内部は青緑色の闇に満たされ、壁からは海水がしとどに滴り落ちていた。天井には無数の魚類の化石が嵌め込まれ、光のない空間に淡い燐光が漂う。あなたは奇妙な安堵を覚えながら、その中心に鎮座する黒曜石の祭壇へと歩み寄る。

祭壇を調べる → 21
別の通路へ → 22
外へ戻る → 10

20
神殿の外縁を巡ると、海底の地形は複雑な迷路のように入り組み、古代の石橋や沈んだ塔が水中に横たわっていた。遠くには、月明かりを呑み込むような巨大な影が蠢くのが見える。あなたは呼吸を忘れそうになる。

影に向かう → 18
迷路を抜ける道を探す → 23
教会跡の廃墟へ → 17

21
夢の記録を続けるうちに、紙面は現実を裏切り始める。墨で描いた塔が立体となり、机の上から滑り落ちて床へと影を伸ばす。あなたの周囲には、もう港町の空気はなく、どこか遠い水底の圧迫感だけが漂っていた。

塔の内部へ進む → 26
塔を破壊しようとする → 14
記録をやめる → 3

22
石造りの広間は半円形で、壁には異形の神々の浮き彫りが並んでいた。その視線はあなたの動きに合わせて微かに動き、冷たい観察の気配を放つ。床の中央には黒い水たまりがあり、その奥底から泡がゆっくりと浮かび上がっていた。

水たまりを覗く → 14
別の扉へ → 27
広間から退く → 12

23
迷路を進むうちに、水は腰の高さまで満ち、あなたの足取りを重くする。壁面には苔と貝殻が厚くこびりつき、かすかに低音の振動が響く。それは心臓の鼓動と重なり、やがてあなたの呼吸を支配しはじめた。

振動の源を探す → 28
水をかき分けて進む → 29
引き返す → 13

24
本を読み進めると、文字は海流のように流れ出し、あなたの視界は渦に呑まれる。気づけば、あなたは古代都市ルルイエの石畳を歩いていた。空は低く垂れ込め、緑がかった月が不気味に揺れている。

都市を探索 → 25
戻ろうとする → 15
月を見上げる → 14

25
あなたは石造りの街路を歩き、奇妙な香辛料と腐臭が混ざる空気を吸い込む。建物は全て異様に高く、窓からは水が滲み出している。遠くで鐘の音が響き、その度に建物の影が僅かに形を変えるのを目撃する。

鐘の音を追う → 26
路地裏に入る → 23
戻る → 24

26
塔の内部は無数の階段と回廊が錯綜し、壁には魚類や触手の形をした燭台が並んでいた。中央の吹き抜けからは海水が滝のように落ちており、その中に巨大な影がゆったりと身じろぎしている。

影に話しかける → 14
階段を登る → 28
階段を降りる → 29

27
扉を開けると、そこは海底の墓地だった。石棺の間には青白い光が漂い、聞いたことのない言語での呟きが四方から響く。あなたは自分の名前がその囁きに混じっていることに気づく。

石棺を開ける → 14
墓地を進む → 30
引き返す → 22

28
鐘楼は黒い金属でできており、叩かずとも鐘は震えていた。低い音が空気を震わせ、あなたの胸骨を内側から揺さぶる。鐘の向こうに開いた空は、深海の闇そのものであった。

闇へ飛び込む → 14
梯子を降りる → 23
鐘を鳴らす → 30

29
潮だまりを覗くと、水面が突然破れ、無数の手のようなものが伸びてくる。それはあなたを引きずり込もうとし、冷たさと共に古代の匂いをまとっていた。

振り払って逃げる → 13
抵抗する → 14
手を掴む → 30

30
夜明け前の港に、あなたは再び立っていた。深海都市ルルイエの幻影は消え、しかし胸の奥にはまだ深海の余韻が渦巻く。波止場の木板はしっとりと濡れ、潮の匂いが漂う中、月光が港の水面に淡く反射する。あなたが手にした金属片や巻物は、ただの物理的な存在ではなく、未知の世界の記憶を呼び覚ます鍵となった。風がささやき、霧の中に微かに異界の構造が見える気配がするが、それはもはや恐怖ではなく、畏敬と好奇心を伴うものとなっている。あなたはその存在が永遠に溶け込むのを感じた。心の中に芽生えた探究の火を抱き、あなたは港を後にする。遠くから聞こえる潮騒は、未来に待つ新たな冒険の前触れのようだった。
END


☆★====================================================★☆

本作は、私の想像の中で1920年代のニューイングランドを歩く気持ちになり、霧に包まれた港町や海岸線を思い描くことで生まれた幻想の産物です。アーカムの夜の静寂、海面に揺れる異形の都市の影、そして人智を超えた深海の存在――そうしたものを、読者の皆様にできる限り鮮明に体験していただきたく、筆を走らせました。
ゲームブックという形式を通じて、物語は一つの線ではなく、無数の分岐をもって展開します。読者の選択によって、深淵を覗き込む恐怖、あるいは都市の神秘に触れる驚きの瞬間が変わるのです。この非決定的な構造は、私が愛するクトゥルフ神話の持つ「人知の限界」を象徴するものでもあります。心の奥底に潜む畏怖や憧憬を感じ取っていただければ幸いです。
本作が読者の皆様の想像力を刺激し、夜の海霧の向こうにひそむルルイエの幻影を心に留める一助となれば、これ以上の喜びはありません。

森梟夫


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2025年10月25日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第663号 FT新聞 No.4658

From:水波流
少し前に『ヴィンランド・サガ』を11世紀の参考文献として読むかと書きましたが、無事に読み終わりました。
いまは余韻に浸りつつ、副読本としてつい先月発売された『ヴァイキングの日常生活』(原書房)で知識を補足しています。
ビジュアルから入って、文字で知識を更に深めるのは、脳内補足ができてとても良いですね。
昔から持っていたのですが、『バイキングとアングロサクソン』 (ニュートンムック 古代遺跡シリーズ)もビジュアルと文字のバランスに優れる良書です。

From:葉山海月
某所で見たQ&A
Q「メロスはなんで走らなければならなかったのでしょう」
A「タイトルがそうだから」
なんかここに、世界の果ての真理を見たのは、私だけ?

From:中山将平
11月1日(土)、僕個人として奈良女子大学内で開催のオールジャンル同人誌即売会「COMIC☆PARTY37」にサークル参加します。
ブース配置は【C-3とC-4】。個人で作っているイラストのシリーズ「カエルの勇者ケロナイツ」を扱います。
ケロナイツの本は現在作成中ですが、このイベントには間に合いません。
12月6日(土)と7日(日)頃に開催される大阪なんばでのイベントに合わせたいところです。
上記の事柄とは別に、11月3日(月・祝)、FT書房は札幌コンベンションセンターで開催の「北海道コミティア22」にサークル参加する予定です。
ブース配置は【I13】。ゲームブックや1人用TRPG「ローグライクハーフ」等の作品を扱います。
お近くの方はぜひ遊びにお越しいただけましたら。


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(水)=水波流
(天)=天狗ろむ
(葉)=葉山海月

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■10/19(日)~10/24(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2025年10月19日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4652

Re:『城塞都市ドラッツェン』アランツァワールドガイド&都市サプリメント&新職業
・生物学者カメル・グラント教授の旅を通じて、アランツァの主要都市をご紹介するアランツァワールドガイド。今回は、これまで再配信の機会のなかった『城塞都市ドラッツェン』を、都市サプリメントおよび【錬金術師】のデータとともにお届けしました。
d66シナリオ『女王の肉』(杉本=ヨハネ著、紫隠ねこ監修)は、このドラッツェンを冒険の舞台としています。また、過去のドラッツェンやレラヴィリア等で使用された〈ゴーレムナイト〉が実際にどのようなものだったのかは、ゲームブック『ゴーレムナイトと巨人戦争』(山田賢治著)で描かれています。今回の記事で興味を持たれた方は、ぜひ両作品をプレイしてみてください!
[女王の肉]https://ftbooks.xyz/shinkanjyoho/niku
[ゴーレムナイトと巨人戦争]https://www.amazon.co.jp/dp/B00P4X25AQ
(く)


2025年10月20日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4653

もうひとつの「運」の話。
・先週(No.4646)のテーマを引き継いで、「運」と「ゲームの面白さ」についてお話をします。
電源系デッキ構築ゲーム「ハースストーン」がある時期から取り入れた、「ランダムな3枚のカードから、好きなカードを1枚選ぶ」というカード。
それは「運ゲー」だと遠ざけるプレイヤーがいた一方、時間とともに、単なる「当たりとはずれ」ではない戦略的な要素も豊富であることが浸透していきます。
この「運と実力のハイブリッド」には、まだまだゲームを面白くする余地があるとして、自作への応用に意気高らかな杉本氏であります。
(明)
*編集部註*
本記事の配信時に誤って推敲中の記事の二重配信がありました。後から配信された「No.4660」のものが正しい記事となります。訂正してお詫び申し上げます。


2025年10月21日(火)田林洋一 FT新聞 No.4654

『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12
・東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、12回目の記事をお届けしました。
全13回予定の記事も、ついに今回でゲームブック解説は最終回。
前回に引き続き、第二回ゲームブック・コンテスト入選作である『エクセア』(宮原弥寿子)、『第七の魔法使い』(新井一博・堀蔵人)、またSAGB最後の作品となる『ギャランス・ハート』(宮原弥寿子)の紹介。
ゲームブックにおける「ゲーム面でのシステムや仕掛け」「ブック面での世界観や物語」の両面から、SAGBの末期の作品群について検討します。
またゲームブック回の締めとして、1992年にゲームブックブームの凋落とともに、SAGBというレーベルが辿った流れについても語ります。
なお予告にありました、番外編『ドラゴンウォーリアーズ』については配信まで少し時間を頂く見込みです。
(水)


2025年10月22日(水)ぜろ FT新聞 No.4655

第10回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第462回。
姉たちを救うためのミナの旅は、時計塔からゾンビ墓地、そしてテクア神の神殿へと進みます。
「前回」の旅との違いは、仲間の存在と、修理した魔法の時計の種類。そしてテクア神の反応も、どうやら「初対面」のときとは異なるようです。
お手元のメールボックスに第5回〜第7回のリプレイのデータがある方は、改めて今回と読み比べてみるのも楽しいかもしれません。
(く)


2025年10月23日(木)東洋夏 FT新聞 No.4656

ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.8
・X(旧Twitter)にて意欲的にリプレイ執筆中であり、生き生きとしたキャラクターたちが魅力的な、
東洋夏氏による「写身の殺人者」リプレイ第8回目です。
北方都市サン・サレンを脅かす、「自分の姿をした何かに殺される夢を見た者が、実際に殺される」奇妙な連続殺人事件。
件の悪夢を見てしまった聖騎士見習いの少年シグナスと、喋る「おどる剣」クロは、「写身の殺人者」を名乗る犯人を仕留めたものの……何かがおかしい、とシグナスにはしっくりきません。
真実を求めるシグナスが辿り着いたのは、彼にとっては信じがたいものでした。
皆さんには真犯人が予想出来たでしょうか? 答え合わせはどうぞ記事にて!
(天)


2025年10月24日(金)休刊日 FT新聞 No.4657

休刊日のお知らせ 
・毎週金曜日は、読者から投稿された記事がここに入れるように、空けてある曜日です。
あなたの記事を、お待ちしております!
(葉)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(緒方直人さん)
【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ、面白かったです。
甥っ子ちゃんかわいいですね。ほっこりしました。中身のクイズも「きのう」「しろ」で木の後ろとはなかなかトンチが効いてて面白かったです。たまにはこういうのも良いですね。

(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
たまにはこういうのもほしいなって思ったから、自分で書きました。たまに金曜日が埋まっているとプチしあわせな気分になるなって思って、金曜日に入れてもらいました。
この作品、ルート分岐がたくさんあるので、何回でも遊べる楽しさもあります。このリプレイだけではとても遊びつくしたにはほど遠い。再販を機に、多くのお子さんたちが遊んでくれたら嬉しい作品です。
この作品、入手した頃から、甥ちゃんがプレイできる年齢まで成長したら読み聞かせてリプレイ書こうってずっと思っていたんですよ。それが何年越しに叶った形です。次は来年あたりになったら、甥ちゃんの弟がプレイできるくらいになりそうかな。


(忍者福島さん)
魔女の女の子を探すクイズ、一瞬機能しろ?と考えてしまい、何のことかわかりませんでした(笑)
やっぱりこういう本は、イラストと一緒に子供と読み進めるのがいいですね。
なお、ウチのこどもは鉄ちゃん息子とニチアサ娘に育ってしまったので、鉄道の本とプリキュアの本は熱心に読んでます(笑)

(お返事:ぜろ)
お便りありがとうございます。
機能しろ! さすがに幼児にはわかりませんね(笑)
エルメス「キノ!うしろ!!」
などと「キノの旅」ネタを飛ばしたら通用しますか?
鉄ちゃんにニチアサ、良いですね。ジャンルを極めがいがありそう。
うちはニンテンドーSwitchの魔力が強すぎて。図鑑系が好きみたいで、ゲームを進めるだけでなく、図鑑を埋めては眺めて楽しんでいます。ゲームの楽しみ方はそれぞれだなあと思う次第です。


(蒙太 辺土さん)
中山先生の"手がかり考"感想で〜す。
〈手がかり〉で最終イベント出現タイミングをコントロールする…!その発想はありませんでした。イェ、どの発想も無いのですけれど…(笑)
新作の『クトゥウルウ』では〈手がかり〉システムを正と負、両面の効果をもたらすものとしてとらえ直すアイディアに舌を巻かされ、そして再びの今回の記事。
元からしてそんな手があったとは…!
深すぎるぜ〈手がかり〉。そしてローグライクハーフ!
是非また、R.L.Hのシステム面などについてのお話お願いしまっす!
追伸: カエル人ステッカーやモンスターカード、並べて眺めて楽しませて頂いております。
『フログワルド』関連の発表の方も楽しみにお待ちしてますよ〜!

(お返事:中山将平)
ご感想をいただき、ありがとうございます!
RLHは「頒布開始から約2年の新しいスタイルのTRPG」であり、「遊び方」についてまだ広く知られてはいないゲームなのかもしれません。
せっかくご感想をいただきましたので、また次の記事も書いてみようと思います。
カエル人の本、作成を引き続き頑張ります!


(忍者福島さん)
運をランダム性として捉えるか、戦略の一部として捉えるかでゲームのやり方に影響があるみたいですね。
現実でも上手くいった時のAプラン、上手くいかなかった時のBプラン、はたまたどちらでもない選択のCプランまで考えて物事を選択してる事もありますし、運を戦略的に捉えるのは割とある事なのかもしれませんね。

(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます☆
「現実のたとえ」が素晴らしいと思います。
おっしゃるとおりで、人生ほど重要な事柄になると、分岐ごとに対応を考えることで、運に振りまわされる要素を減らしていく人が増えますよね。
私が申し上げたかったのは、運を「不確実なものだから避ける」という姿勢よりも、「バリエーションを生む装置」として楽しむこと──遊ぶ側も、創る側も──ができれば、きっとよりいっそう奥深いゲームが生まれるという考えです。
ゲーム制作者として、自分が得た気づきと、それを活用した作品づくりへの姿勢を書いた記事でした。


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2025年10月24日金曜日

休刊日のお知らせ FT新聞 No.4657

おはようございます。
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2025年10月23日木曜日

ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイvol.8 FT新聞 No.4656

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
ローグライクハーフ『写身の殺人者』リプレイ vol.8
 
 (東洋 夏)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
 
 FT新聞をお読みの皆様、こんにちは!
 東洋 夏(とうよう なつ)と申します。

 本日はサン・サレンが舞台のd33シナリオ『写身の殺人者』のリプレイ小説をお届けいたします。
 製本版『雪剣の頂 勇者の轍』に収録された、サン・サレン四部作のひとつです。
 ファンメイドのリプレイとなりますが、お楽しみいただけましたら幸いです。

 この連載は隔週でお送りしており、本日は第八回にあたります。
 冒険は最終イベントに突入しておりますが、今日が初めての方にもお楽しみいただけるよう、少しだけ主人公たちと前回までのあらすじをご紹介させていただきますね。
 主人公を務めますのは、聖騎士見習いの少年シグナスと、元人間だと主張する不思議な〈おどる剣〉クロ。主人公ふたりをプレイヤーひとりが担当するスタイルでお送りします。
 シグナスとクロは居合わせたサン・サレンの街で「悪夢殺人」とでも言うべき事件に遭遇します。これは自分の姿をした何者かに殺される夢を見て、その後、現実でも殺されてしまう。そんな気味の悪い事件なのですが、ついにシグナスもその悪夢を見てしまいました。
 犯人を捕まえるべく捜査に乗り出したふたり。前回のリプレイでは、宮廷医アグピレオの薬局に呼ばれ、その工房で何と連続殺人事件の犯人〈写身の殺人者〉と対決! アグレッシブ過ぎるアグピレオ先生の援護もあり、鮮やかに犯人——薬局の下働きを仕留めます。
 それで今日はエピローグ……。いえそれが実は、違うんです。
 何が違うのかは、この先をどうぞお楽しみに。

 
 なお、ここから先はシナリオのネタバレを前提に記述します。プレイするまで内緒にしておいてくれという方は一旦この新聞を閉じ、代わりにシナリオを開いてサン・サレンにお出かけいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 それでは最終イベントの模様をご覧あれ。
 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
[エピローグ/だがエピローグでないもの]

「おっ、シグナス! 手柄だったそうじゃないか」
 領主館に帰還するとすぐに、玄関ホールで待ち受けていた聖騎士の先輩ベルールガに見つかった。
 アグピレオ薬局の下働きが巷を騒がせた写身の殺人者であったことは、既に伝わっている。シグナスは今にも倒れそうな顔をしていたアグピレオ先生を支えたくて、しばらく薬局に留まっていたのだ。
「サー・ノックスもご存じだからな。うんと褒めてもらえよ。ほらこっち」
 力強い聖騎士の先輩はシグナスの腕を取ると、有無を言わさずホールに詰めかけた人々を掻き分けて奥へと進んでいく。押しのけられた誰も彼もが文句を言おうと振り返っては、こちらの顔と血まみれの装束を見て不平を引っ込めた。それが面はゆく、シグナスはサー・ベルールガがもっと速く歩いてはくれまいかと願うのである。
 やがて導かれたのは謁見者控え室、今はナリクの聖騎士たちが領主警護用の臨時詰め所にしている部屋だった。部屋の中に入るなり、シグナスは緊張して一本の棒のようになってしまう。控え室には数人の騎士がぱらぱらと点在していたが、そのうちの一人は見間違えようもない、主人ノックス・オ・リエンスだったからだ。
 サー・ノックス。歳の頃は二十代の半ばを過ぎたあたり。男性にしては細っこい長身からすらりと手足の伸びた立ち姿は剣を連想させる。彼についての噂は枚挙に暇がなく、信じがたいものではコーデリア王女様に命じられて暗殺をしているとか、単身で敵国ドラッツェンの城に忍び込んだとか、いやいや潜り込んだのはドラッツェンの女王の寝室だとか、それより恐ろしいのでは飛竜ドレイクを生きたまま八つ裂きにしたというのも……。眉唾物だが、シグナスはその内の幾つかは真実でもおかしくないと思っている。
 窓際に立った主人は既にシグナスの存在に気づいており、三白眼がちな鋭い左目でシグナスを見ている。右目は今日も長い前髪の下に隠されたままだ。その横にもうひとり、サン・サレンの高官らしき人物が揉み手をしながら難しい顔をして立っている。
「サー・ノックス!」
 ためらいを察してか、生来の人懐っこさによるものか、ベルールガは引き続きシグナスの腕をむんずと掴むと歩いていく。
「何、お前は怒られるような事なんぞ、たったのひとつもしてないさ!」
 それは僕の失態をご存じないからです、と反論したかった。すべての選択が叱責の種になる気がする。牢から引き出された罪人のように主人ノックスの前に立つ頃には、シグナスはすっかり萎縮していた。
「戻ってきましたよ、可愛い従騎士くんが」
 ベルールガがそう言っても主人の表情はぴくりとも動かない。怒っているのか、いないのか。あるいは何とも思われていないのか(こちらの方が確かそうだ)。ただぞんざいに手を振ってベルールガを追い払ってしまった。
 シグナスはますますおどおどして、
「サー・ノックス、あの、シグナスと<おどる剣>のクロは只今、帰還いたしました。その……」
「怪我は」
「ふへっ」
 予想外の質問に奇声が出てしまったシグナスを、主人ノックスはじろりと睨め付ける。てっきり開口一番に叱られるのだと思っていたのだ。
「無いです。打ち身と擦り傷くらいで」
「それは、有る、と言う」
「申し訳ございません……」
 主人は軽く溜め息をついてから、傍らのサン・サレンの高官を見て言った。
「こちらで事情をまとめてから、ご報告を差し上げる」
「それは困る。今すぐにでも御領主様の前に出て全てを説明してもらわなくては」
 勢いよく喋り出した高官がシグナスに歩み寄ろうとするのを、主人がさりげなく間に割って入って制する。
「まだ未熟ゆえ、お耳障りで要点の分からない証言をすることでしょう。指導をしてからお出しすべきだと存じます。それに」
と言った後に不意に声が低く、凄みを帯びて、
「これは僕の従騎士だ。貴方の権限は及ばない」
 その後の沈黙には、「連れて行きたければ僕を殴り倒すがいい、貴方にやれるものならばだが」というニュアンスが含まれている。
 高官は反論の言葉を探したが見当たらず、明日の朝には必ず御前に出てもらう、と言い捨てて、怒り狂った足取りで控え室を出て行った。
(かばってくださった!? いや違う、ロング・ナリクの立場を守るためだ。でも、それでも……)
 シグナスは驚きに目を白黒させている。
「それで」
 淡々とした声に顔を上げれば、やはり特に何とも思っていなさそうな主人がいた。
「解決か」
「いえ、サー・ノックス。あの、僕が考えるにあの薬局の下働きは……」
 その先を続けるにはありったけの勇気を掻き集める必要があったが、何とかシグナスはやってのける。
「……犯人じゃないかもしれません」
「根拠は」
「あの、僕たちは被害者のご遺体を見せてもらいました。その時に、防御した傷跡が無いのがおかしいなって思ったんです。僕だけじゃなくてクロも確認してます。薬局の下働きは"俺の事を殺人鬼だと思い込む"んだって言ってたんですけど、それはつまり、被害者のひとが下働きこそ〈自分〉だと思い込んで、自分が〈殺人鬼〉のように錯覚して、自分で自分を傷つけちゃうという意味だと僕は受け取りました。理屈は合っているようでもあるんですけど、でも……」
シグナスが言葉を一旦止めて、何の反応もない主人をこわごわ見上げると、
「続けろ」
と一言だけ返ってきた。
「はい。ええと、今回の事件はまず悪夢を見て、それから実際の殺人という順番です。僕も悪夢を見て、それから襲われました。僕にそっくりな奴でした。でも、下働きが言う通りなら、死者が出るきっかけは、被害者が下働きを〈見て〉錯覚を起こすことですよね。でも、僕が襲われたときは周りに誰もいませんでした。これもクロが知っています。加えて言うなら、僕が僕のニセモノに襲われたきっかけは、自分の姿が映った水溜まりを覗いたからで、下働きに会ったからじゃないです。もうひとつ、僕は自分を襲うんじゃなくて、その、クロを襲ったみたいで……。なので、その、すっきりしないんです。下働きの考えている薬の効果と、僕に起こったことがちぐはぐで。何かまだあるんじゃないかと」
「ならば、どうする」
「真実を探したいです、サー・ノックス。でも手がかりが無くて」
 悔しいですと本音を漏らしたシグナスを見る主人の表情が、ふと和らいだ気がした。恐らく目の錯覚であろうが。
「捜査の継続を許可する」
「はい! ありがとうございます、サー・ノックス!」
「ひとつ。お前の目の付け所は良かった。遺骸を調べるというのは」
 主人がヒントを出してくれたのだと気付いて、シグナスは反り返る寸前まで背筋を正した。
「でしたら、ええと、教えていただきたいことがあるのですが……」
「言ってみろ」
「犯人だと名乗った下働きの死体は、何処に安置されているんでしょうか」
「この領主館の地下で、アグピレオ医師による検死が始まっている。見に行くのだな」
「はい」
 サー・ノックスは自身のマントに留めてあったピンを抜くと、シグナスに手渡した。ただのピンではない。太陽と十字の紋章、すなわち聖騎士の身分を示す大切な品だ。それを託すと言うのである。
「立ち入りを拒むものがあれば、僕の名を出せ。分かったな」
「……! はい、ありがとうございます、サー・ノックス!」

 ■

「駄目だ、駄目だ! ここはアグピレオ先生以外は入れるなと言われている。ましてやお前のような子供など、駄目に決まって……」
 槍を持った衛兵はシグナスが取り出したピンを見て、渋い顔をした。領主ラドス・フォン・ハルトは、悪夢連続殺人事件の調査においてナリクの聖騎士が求めるものはすべて与えよと命令している。衛兵はしばし悩んだが、結局道を開けた。シグナスは彼の気が変わらない内にと螺旋階段を駆け下りる。
 地階には廊下に沿っていくつもの部屋が並んでいたが、目指す部屋はすぐに見つかった。半開きになった扉から明かりが漏れている。人の声も切れ切れに聞こえてきた。
「……ふふ……良い……顔……をして!」
 シグナスは雷に打たれたように立ち止まる。その声には、聞き覚えがあった。もちろんこの部屋にいるべき人の声であるが、しかし──。
 鞘からクロを引っ張り出し、シグナスは臨戦態勢を取りながら、足音を殺して部屋に近づいた。
「あは、はははははは!」
 熱に浮かされたような、高らかな笑い声が響く。扉の陰に隠れて中を窺うと、アグピレオが台の上に載せられた下働きの死体を覗き込みながら、にやにやと笑っていた。
(そんな)
 シグナスの背筋に悪寒が這い上る。
(そんなことって。僕は知ってる。あの顔、水たまりから出てきた僕のニセモノと同じ笑い方だ)
 ではこれは、まさか宮廷医のニセモノなのだろうか? ニセモノがついに実体を持ったということ? 僕はその決定的な瞬間を見ている? ならば逃がしてはいけない。真実に繋がる大きな手がかりになるはずだから。
「クロ、捕まえよう」
「分かった」
 ふたりは部屋に飛び込むなり、後ろ手に扉を締め切った。その音にアグピレオ──のニセモノと思しき存在が驚いたように顔を上げる。
「お前が写身の殺人者だな! 観念しろっ」
 シグナスの言葉に、アグピレオの顔からすうっと表情が失われた。熱狂も、狼狽も。
「君は上手く騙せたと思ったんだけどね」
「──え」
「今夜の残業は長くなってしまうでしょう。報告書の手直しに、検死が二件。〈おどる剣〉は含まれないのが幸いかもしれませんね」
「──アグピレオ先生?」
「シグナス、こいつは本物だ! 周りを見ろ!」
 クロの警告で、はっとして室内を見渡す。狭い部屋の中にあるのは台に横たわる死体だけだ。ニセモノに襲われているなら、アグピレオはふたりいるはずだろう。しかし今、アグピレオは、ひとりしかいない。宮廷医は悲しげに首を振った。
「──先生が、写身の殺人鬼……!?」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 
 今回のリプレイは以上となります。
 シナリオのフレーバーテキスト的には「主人公は初めから怪しいと思っていた」ことになるのですが、これまでの経緯を考えるとこのピュアな十二歳は微塵も疑ってなかったと推測されるため、主人ノックス様に助け舟を出していただくことにしました。何せシナリオ中で獲得できる「手がかり」も、ご遺体に防御の傷が無いという一点しかありませんでしたからね……。
 信じていた大人の真の姿を見てしまったシグナスくん。
 恐らくいま物凄く傷ついているであろうシグナスくん。
 この対決、一体どうなってしまうのでしょうか。

 というところで、再来週の木曜日にヒリつく真の「最終イベント」をお届けします。
 良きローグライクハーフを!
 
 ◇
 
 (登場人物)
 ・シグナス…ロング・ナリクの聖騎士見習い。12歳。殺人者の悪夢を見ておねしょした。
 ・クロ…シグナスの相棒の〈おどる剣〉。元は人間かつ騎士だと主張している。
 ・ノックス…シグナスの主人。超が付くほど厳格な聖騎士。
 ・ベルールガ…ノックスの同僚の聖騎士。優しい。
 ・サン・サレンの領主…殺人者の悪夢に苛まれている。
 ・アグピレオ…領主付きの医師。心が落ち着くハーブティーの売り上げが好調。

■作品情報
作品名:『写身の殺人者』
著者:ロア・スペイダー
イラスト:海底キメラ
監修:杉本=ヨハネ、紫隠ねこ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
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『雪剣の頂 勇者の轍』ローグライクハーフd33シナリオ集に収録


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2025年10月22日水曜日

第10回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4655

第10回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。


ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加えたことで、また違った経験を積みながら、ミナの冒険は続きます。
今回は時計塔の攻略の続きからです。


【ミナ 体力点1/4 悪夢袋5/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 0枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。


●アタック02-6 森の中の小さな出会い

2階は、からくりの研究室のようになっていた。
チャマイにあった時計塔の内部の部屋に、雰囲気が似ている。

フェルは嬉々として台の上の図面をのぞきこんでいる。

「なるほど。キミの時計はここで研究されてたんだな。キミがこの塔にやけに詳しい理由に納得がいったぜ」

たしかにその図面は、ボクの魔法の時計のものに見えた。
ボクはここがそんな場所だなんて知らなかったから、フェルの勘違いなんだけど、誤解させたままにしておくことにした。
ここに住んでいたノームたちがきっと、魔法の時計のもとになる研究をしていたに違いない。

また、この部屋にはまだ生きている装置もあった。
檻に閉じ込められた夢魔から、悪夢を抽出すると言うおぞましい装置だ。
たぶん、ボクの悪夢袋を作り出すための研究だ。

「夢魔は人に悪夢を見させてそれを食べる魔物だ。ま、助ける必要なんてねーよ」

フェルは軽く言い放つ。
ボクは夢魔から取り出された悪夢を、空になった悪夢袋に補充することを思いついた。
悪夢が蓄えられている容器に空の悪夢袋を近づけるだけで、悪夢袋は全部、いっぱいになった。
どういう仕組みかはわからないけれど、悪夢袋は周囲の悪夢を吸収する性質を持っているみたいだ。
その特徴は、夢魔の生態に近い。

悪夢袋の作り方について、非道な行為を連想してしまいそうになる。が、それ以上思考を進めるのはやめておいた。
悪夢袋は、ボクが姉たちを助けるために有用な道具なんだから、利用すればいい。

ボクたちは、3階へと上がる。
3階は、外から見える大時計の裏側だ。
ボクは、3階から外の景色を眺めてギョッとした。
ボクたちがこれから行く先に、墓地があり、そこにおぞましいゾンビたちが、大量に徘徊しているのが見えたからだ。

「ありゃまずいな。前に来た時よりだいぶ増えてるぞ」

フェルがつぶやく。
フェルが言うには、昔はゾンビはいなかった。
ローズ家の当主が吸血鬼になって以来、森の闇の力が強まったためか、ゾンビが出現を始めた。
それが徐々に数を増やしていき……。

「今じゃご覧のありさまってわけだ。あんな墓地じゃ、新しく入る死人はいない。出しきっちゃえばそれ以上増えないと思うけどな」

ボクには秘策があった。<刻々の狭間時計>の力を使えば、もしかしたら通り抜けられるかもしれない。
時を止める、とっておきの魔法だ。
けど、あの魔法ので動けるのは自分だけ。フェルのこと、どうしよう。

ボクもフェルも、有効な打開策を見いだせないまま、時計塔を降りた。

小道を歩く間も、この先に待つゾンビ墓地の脅威に、自然と無言になる。
やがて日が暮れてきた。

「くよくよしてもしゃーない。とりあえず今日はしっかり寝とこうか」

フェルが提案する。ボクも同意だ。

手ごろな空き地を見つけ、どこで寝るかを思案する。
この森の危険性を考えれば、やっぱり太い木の上がいいかな。

「あーー!」

その時、ボクと同様、寝床を探していたフェルの大声が聞こえた。

なにごと?

ボクは急いで声のした方へ急行する。
声が聞こえたのは木の上だ。ボクはその木を登った。
するとなんと、木の上は簡易の住居になっていた。
そしてボクは、2人のノームが再会を喜び合っている場面を見ることになった。

「キーウ、紹介するよ。オレの旅の連れ、ミナだ。闇エルフみたいに見えるが訳ありだ」

それからボクの方にキーウと呼ばれた初老のノームを紹介した。

「キーウはこの森の研究家だ。もちろんあの時計塔のことも調べてる。キミとは話が合うんじゃないか?」

ボクたちはキーウに一夜の宿泊を求め、キーウは時計の研究で詰まっているところの手伝いをすることを条件に、認めてくれた。
キーウとフェル、そしてボクは、時計についての談義を深め、話題は盛り上がり、夜は更けていった。

さすがに寝なければ。
そんなタイミングでキーウは、銀貨を持っていないかとボクに尋ねる。
ボクはこの問いかけに、既視感を覚えた。もちろん銀貨ならあるよ、と取り出そうとして、銀貨を持ち合わせていないことに気づいた。

あれ? ボク、銀貨持っていなかったっけ。
記憶をさかのぼる。たしか、ねこ人からニンニクを買って、おつりに銀貨を……。
違う。ボク、ねこ人とはそんなに親しくお話していなかったよね。フェルと過ごしてたから。
あれ? 銀貨を渡して、どうなるんだっけ。
ボク、森の中で銀のナイフが手に入るって思ってたよね。それって……ここで?

おかしいな。記憶が混乱しているみたいだ。
早く寝てしまおう。


●アタック02-7 ゾンビ墓場の突破口

「起きて、ミナ」

ニナ姉のささやき声に起こされた。
また、あの夢だ。あの日。母が殺され、姉妹がばらばらになった、あの日の夢。
幾度となく繰り返し見た、あの夢。

まって。これは本当に夢?
もしかしたら、時の魔法が不思議に作用して、ボクを過去に戻してしまったのかも。

ここでボクが何かを選び直したら、「やり直し」になって、未来が、ううん、過去が変わるのかも。

ボクはまだ幼い。どうしたらいいんだろう。
未来をつかみ取るためにできること。
ニナ姉と一緒に戦う? それだけはやめておこう。前より悲惨な結果が待っていることは明らかだ。
そうだ。ボクはベッドの下に隠れよう。そうしたら、ニナ姉はフリーになる。騒ぎを起こして、その隙にほかの姉たちに逃げてもらえば……。

ボクは、ベッドの下に潜り込んだ。
ベッド下、ベッドの背面に、黒いクモがこびりつくように、べったりと張り付いていた。
ボクは、その外見に見覚えがあった。時計塔で見た。

夢魔だ。

ボクは短剣を取り出し、夢魔に斬りつけた。
脚を切断する。夢魔は逃げ去った。その瞬間、ボクはがばっと跳ね起きた。
全身、汗でびっしょりだ。

知らぬ間に、夢魔の襲撃を受けていた。
夢魔は、人に悪夢を見させて、それを食べる。
悪夢の中には必ず夢魔自身が潜んでおり、夢の中で見つけて攻撃すれば、それは夢魔への直接的なダメージとなる。
ボクは悪夢の中で、夢魔を撃退することに成功したみたいだった。

枕元に、黒いクモの脚が1本、落ちていた。現実の夢魔も、しっかり傷ついているみたいだ。
ボクは改めて眠りについた。興奮してなかなか寝つけなかったけれど、それでもいつしか意識は途切れた。

朝。目覚める。
夢魔を撃退したこともあり、多少は休むことができた。体力点が1点、回復した。

みんなで食べ物を少しずつ出しあい、朝食を作って食べた。
旅立つ前に、キーウがボクに小さな贈り物をくれた。それは1枚の歯車だ。時計の修理に使える。

「楽しい一夜を過ごさせてくれたお礼だ。ありがとう」

キーウはこれから、時計塔を攻略に向かうという。
フェルが昨夜、時計塔への入り方と内部構造について、詳しく説明していた。
同時に、自分が持ち帰ろうとして、あきらめた仕掛けを、キーウに取られてしまうことを悔しがっていた。

さあ、ボクたちにはボクたちの旅がある。
小道を進めば、いよいよゾンビ墓地に到達する。
ものすごい腐敗臭があたりに漂っている。風がよどんでいる。
低い石塀に囲まれた墓地には、無数のゾンビが徘徊していた。

「あーあ、結局なんのアイディアもないまま来ちゃったよ」

フェルがぼやく。

「この数じゃ、さすがに無理だ。引き返すことを勧めるぜ。……っつっても、キミは間違いなく行くって言うんだろうな」

そうだよ。エナ姉とティナ姉を取り戻すためなら、どんな困難だって。
できるかどうか、わからないけど、ひとつだけ手段を考えついてる。

「魔法の時計の力か? それやってみて無駄だったら、あきらめるんだぞ」

ボクは、<刻々の狭間時計>を取り出した。
この時計は、砂時計を思わせるデザインをしている。
とはいえ、ちゃんと針はついている。
この時計を使えば、集中している間だけ、時を止めることができる。
しかしそれには、悪夢袋を3個も消費する、大技だ。

<刻々の狭間時計>のボタンを押す。
時計の針が動き出した。同時に世界が止まる。
この中で動けるのは、ボクだけだ。

ボクは墓地の入口の門を開ける。そうして、止まっているフェルを背中に背負った。
小柄なノームの割には重い。きっと道中で気になった道具などを、背負い袋にため込んでいるに違いない。

全速力で駆け抜けたかったが、フェルを背負っていては、そうはいかない。
止まっているゾンビたちの間をぬって、ゆっくりと歩を進めてゆく。ゆっくり、ゆっくりと。
集中力が、いつまで続くか。時間が、無限に感じられた。

ボクは、どうにかゾンビ墓地を抜けた。
疲れてクラクラする。もう、限界だ。
フェルを降ろすと同時に、時計の針が止まる。

時が、動き出した。
フェルは、立っていたはずの自分がしゃがんでいる姿勢になっていることに気づいたようだった。
ボクはフェルの隣で両膝と両手をついて、荒い息を吐いている。

「ここは……墓地を、抜けてる?」

ようやくフェルは、現在位置に気がついた。同時にここが、まだ安全圏内ではないことも。

「おいキミ、大丈夫かよ。……ゾンビどもに気づかれて追われたらおしまいだ。走れるか?」

今度はフェルが、ボクの手を取って走り出した。ボクは呼吸が整わないままに、よろめくように走った。
やがてゾンビどもから十分に距離が取れたと思われるところで、ボクたちは大の字になって仰向けに寝転んだ。

もう、しばらく動きたくない。

「知らない間にゾンビの墓を通り抜けたの、キミの時計の魔法か? ものすごいな」
「あれは、とっておき。何度もは、使えない」

呼吸を整えながら、ボクは答えた。
悪夢袋がみっつ、しぼんでいた。
この先、いよいよローズ家の館なのだから、なるべく温存しないと。


●アタック02-8 テクア神との邂逅と夢の時計

やがて建物が見えてきた。
そこはまだ、ローズ家の館ではなかった。
入口の上部に、からくり神テクアの像が飾られている石造りの建物。
テクア神の神殿だろう。

ボクとフェルは、吸い寄せられるようにその建物に入っていった。
なんだろう。この建物では、なにかものすごく重大なことが起きる予感がする。

からくり神テクアは、ノームが信仰する神である。
むしろ、ノームの生きざまそのものが、テクアの思想を体現していると言ってもいい。

内部の壁に彫られたレリーフは、からくりの歴史をたどるものだ。
フェルはそのレリーフに感嘆の声を漏らしていた。

「この神殿がいつ頃建てられたものなのか、正確なところはわかっていない」

フェルが、案内人だったことを思い出したように説明を始めた。

「少なくともローズ家の現当主の代ではないし、あの時計塔が建造されるよりもずっと前からあったものといわれてる。ここに来ると、神性っていうか、本当に神がそこにいるような、荘厳さを感じるんだよ」

ボクたちは神殿の奥に歩みを進める。最奥に、からくり神テクアの神像が見えた。

「なにか、いるな」

フェルが気配に気づいた。
ボクたちの背後に出現したのは、吸血獣だ。

「太陽光が苦手だからって、ここをねぐらにすんじゃねえよ」

フェルはすぐに臨戦態勢を取る。ボクは前みたく不覚を取らないため<速撃の戦時計>を動かした。
動かそうとした。

その瞬間、時が凍りついた。フェルの動きが、完全に固まっている。吸血獣もそうだ。

それは<刻々の狭間時計>で時を止めている感覚に似ていた。
違うのは、動かなくなっているのはボクの方ということ、身体は動かないのに意識はあることだ。

そして、神殿の最奥にあった神像が、動き出した。チリチリとした駆動音がする。
内部にある精巧な歯車が複雑に組み合わさり、動いているのが見える。

「また来たか……」

また? どういうこと?
ボクはここに来るのは初めてのはず。
けど、たしかにボクは、これと同じような場面に出会ったことが、ある。
それよりも、今ボクに話しかけている存在が、からくり神テクアそのものであろうことに、ボクは戦慄した。

「なるほど。記憶の継承は不完全というわけか。あるいは記憶のような内的要因までは考慮しきれぬためか」

テクア神は、ボクにはわからないことを言い、勝手に納得している。

「いずれにせよ、我はお前に力を貸そう。これはすでに定まっているからくりなるが故に」

ボクの時計たちに、テクア神の力が宿る。

「より精密に時を刻む力を与えた。使いこなすが良い」

テクア神の神像は、静かな駆動音とともに、神殿最奥へと戻っていった。
神像の動きが止まると、ボクの身体は動くようになった。同時にフェルの固定も解除されたようだ。
吸血獣も動けるようになったようだが、動けるようになるとたちまち逃げ去ってしまった。
フェルが拍子抜けしている。フェルはどうやら、時の狭間の出来事は体験していないようだ。
あれは、ボクとテクア神だけの出来事だったのだろう。

フェルとボクは、神殿の最奥で神像に対して祈りを捧げた。
構造と論理の塊であるテクア神に祈るというのも変な感じがしたが、そこはフェルの動きにならった。

そうしてボクたちは、テクア神の神殿をあとにした。
旅を続け、日暮れ前にとうとうローズ家の館のあたりにたどりついた。

「どんなに急いでいたって、さすがに夜に吸血鬼の館に突入する、なんて言わないよな」

さすがにそれはそうだ。
ボクとフェルは、交代で眠ることにした。
最初はフェルの番、そして交代して、ボクが眠る。

また、悪夢を見た。
今度は、ボクが魔法の時計を手に入れる場面の夢だ。
魔法学校でモータス教授たちのたくらみを聞き、時計塔のカギを手に入れ、先んじて時計塔へと入り込む。
大まかな流れは同じだったけれど、細部は異なっていた。

ボクは留学先のチャマイの魔法学園の落第が確定していて、あまりの申し訳なさから、自ら命を絶つことを考え、死に場所を探していた。
時計塔では、ボクが魔法の時計を手にする前に、モータス教授が来てしまい、ボクは隠れて教授の様子を見ていることしかできなかった。

それらのことから、ボクはこれが夢であることと、誰かに見させられている悪夢であることを、確信した。
誰か? おそらく、脚を切り落としたあの夢魔に違いない。ボクをつけ狙っていたんだ。

夢の中ではモータス教授が時計を前に、闇神オスクリード様に祈りを捧げていた。
モータス教授の肌が黒くなっていき、彼が魔法の時計の力を手に入れたことがわかった。
それだけではない。夢のモータス教授は、<枝分かれの未来時計>に働きかけ、より完璧なものに仕上げていたのだ。

ボクの夢の中なのに、ボクの知らない知識が出てくる。
それは不思議なことだったけれど、ボクはその光景を胸に刻み込んだ。
もし夢の出来事を覚えていたら、自身の時計にも同じことを施してみよう。

魔法の時計を確保したモータス教授は、ボクが隠れている方に歩いてきた。
このままでは見つかってしまう。

ボクは、時計塔のカギを遠くに投げて、モータス教授の気をそらした。
後ろを振り返るモータス教授。その時、ボクは見てしまった。モータス教授の背中、マントのところに、黒い大グモがへばりついているのを。
その夢魔は、脚が一本欠けていた。やはり昨晩の夢魔だ。こんなところに隠れていたとは。

ボクは隠れ場所から飛び出すと、すかさず夢魔を攻撃した。
無防備な夢魔は、一撃で切り捨てられた。

ボクは夢魔の断末魔の声とともに、目を覚ました。
枕もとに、夢魔の亡骸があった。ボクは夢魔に打ち勝ったんだ。
夢魔のためこんでいた悪夢を吸い込み、悪夢袋もふたつ、膨らんでいた。

目覚めの時間にはまだ早い。
ボクはもう一度、寝直した。気持ちは昂っていたけれど、ボクはいつしか眠りについていた。


次回、ついにローズ家へ。姉たちの生存は?


【ミナ 体力点1→2/4 悪夢袋5→7→4→6/7】<不死化傷>
金貨 3枚
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<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
【精密】


■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。5日前を最後に日記は途切れている。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。


■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
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2025年10月21日火曜日

『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12 FT新聞 No.4654

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『スーパーアドベンチャーゲームがよくわかる本』 vol.12

 (田林洋一)
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 FT新聞の読者のあなた、こんにちは、田林洋一です。

 全13回を予定しております東京創元社から出版されたゲームブックの解説「SAGBがよくわかる本」、12回目の記事をお届けいたします。今回は東京創元社が主催した第二回ゲームブック・コンテスト入選作を中心に紹介します。

 本連載は「名作」と呼ばれるものを最初に集中的に扱っている関係上、連載の後半になるに従って厳しい批評が多くなりますこと、ご寛恕ください。作品そのものを全否定する意図は全くないことをご理解いただければと思います。「私はそうは思わない」という感想がございましたら、ぜひともお寄せいただければ嬉しく思います。
 
 なお、本連載はSAGBとして東京創元社版のみを検討・分析する記事とさせて頂いておりますので、後に別会社から出版された復刻版・改訂版などについては取り上げていないことを予めお断りいたします。
 
 毎回の私事ではありますが、アマゾンにてファンタジー小説『セイバーズ・クロニクル』とそのスピンオフのゲームブック『クレージュ・サーガ』を上梓しておりますので、そちらもご覧いただければ嬉しく思います。なお、『クレージュ・サーガ』はこの記事の連載開始後に品切れになりました。ご購入くださった方には、この場を借りてお礼申し上げます。
 
 『セイバーズ・クロニクル』https://x.gd/ScbC7
 『クレージュ・サーガ』https://x.gd/qfsa0

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12. ゲームブックの臨界点と斜陽 -第二回創元ゲームブック・コンテスト入選作品群

主な言及作品:『エクセア』(1989)『第七の魔法使い』(1992)
『ギャランス・ハート』(1992)
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 日本国内でのゲームブック人気は、東京創元社が第二回ゲームブック・コンテストを開いた1988年から1989年辺りから凋落の一途を辿り始める。第一回のゲームブック・コンテストの応募作品総数は百十九、第二回になるとほぼ半減の六十二、そして第三回のコンテストではなんと三十未満という、もはやコンテストとして成立しない数にまで激減した。
 そんな中でも、SAGBはシリーズとしてコンテスト入選作をいくつか発表しており、第二回コンテストから出版に結びついた作品は二つある。まずは佳作に入選した宮原弥寿子著『エクセア』を見よう。

 祖国であるエクセアは、ファンデム王国の襲撃により壊滅の危機に陥っていた。その刹那、エクセアは王子であるあなた一人を残して、何もかも消え去ってしまった。祖国エクセアはどこに? そんな折、ファンデムでの王位継承権を巡って、「聖なる森を探索して宝玉を持ち帰ったものに、王女を妻とする資格を与える」とのお触れが出された。ファンデムがエクセアの脅威でなくなれば、エクセアが復活するのではないかと夢見て、あなたはこの冒険に参加することになる。
 冒頭で人を惹きつけるプロローグに数々の難解な謎解き、そして巧みな文章力という点で『エクセア』はかなり良くできたゲームブックである。まずはルール面だが、武器や防具によって与えるダメージ(と受けるダメージ)が異なっており、リアルな戦闘が楽しめる。「ドルアーガの塔」やファイティング・ファンタジー・シリーズのように、固定ダメージ(二ポイント)というわけではないのだ。また、画期的なのが重さの概念で、鎖かたびらや両手剣などの強力な防具や武器は、効果が高い一方で重さが半端なく、しかも重さが一定値を越えると技術点が下がるというルールまで盛り込んである。逆に、アイテムをほとんど持っていないと敏捷性が高まるという点を考慮して、技術点が上がる仕組みになっている。リアリティを再現するという点からすると、かなり凝ったシステムと言えるだろう。

 考えてみれば、特にSAGBのゲームブックで重さの概念を取り入れたものは数少なかった。僅かに林友彦の「ウルフヘッドの冒険」シリーズで荷物の限界値を決めているが、食料一袋も錠剤一粒も同じ重さと換算され、単にアイテムの個数で制限を定めていた。この方式は、リアリティについては無視することで、プレイヤーに余計な負荷をかけないというゲーム的に優れた利点を持つ。
 SAGBのレーベルから出ているTRPGの「ドラゴン・ウォーリアーズ」も、「ウルフヘッドの冒険」と同じく「プレイヤーに余計な負荷をかけない重量計算システム(アイテムは種類に関係なく一つと数える)」を採用している。一方で、同じTRPGでも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「トンネルズ&トロールズ(以下、T&T)」は、『エクセア』と同じく重量点という概念を取り入れて「拾得物の管理」をプレイヤーに行わせている。
 確かに、行く先々で見つけることができるアイテムなどを重さや体積に関係なく総取りできるシステムには疑問を感じるプレイヤーもいることだろう。例えばファイティング・ファンタジー・シリーズの一部や「ドルアーガの塔」では、最初に食料が十袋も与えられるが、これだけ重いものを持っていたら敏捷性に支障をきたすのではと考えるのはごく自然なことだ。

 コンピューターゲームのRPGも含めて、どちらかというとアイテムの重さやかさばり方という点は等閑視されることが多かった。重量制限を設けてしまうと、ゲームとしては煩雑すぎるし、クリアに必須のアイテムまで捨てなければならない事態が生じるからである(例外は「ドラゴンクエスト」などだろう)。この点を踏まえつつも、『エクセア』などでは、プレイヤーに負担をかけないように数値で重さを管理することでリアリティを出すことに成功している。
 習得したアイテムや武器について、従来のゲームブックやコンピューターゲーム「ファイナルファンタジー」などに代表される「重量も個数も問わない」方式は抽象的でありながらもゲームとしてのシンプルさを追求している。一方で、『エクセア』や「T&T」は「個数も含めて重量を計算する」という現実の物理法則をルールに落とし込んでいる点で対照的である。その中道を行くのが、「ドラゴンクエスト」や「ドラゴン・ウォーリアーズ」などの「個数は問うが重量は無関係」システムだろう。

 また、『エクセア』ではスタート時に原体力点、技術点、魔術点を自由に振り分けられるルールを採用しているが、先の重さの管理と合わせて、自由にプレイヤーキャラクターを創造できるというのも強みだろう。軽戦士を目指すのならば技術点に数値を多く振り分け、軽い革の鎧とナイフで戦うという戦法が取れるし、体力が自慢の重戦士を目指すのならば、原体力点などに重点を置いて、重い武器を装備するという戦略が立てられる(技術点は低くなってしまうが)。
 因みに、林友彦の「ウルフヘッド」シリーズも武器と防具に重量が設定されていたが、こちらは「装備重量の合計がパワー値を上回ると、攻撃の命中率や回避にペナルティを受ける」という能力値の不利なマイナス面にのみルールが適用されていて、「荷物が軽い時は動作が機敏になる」という点はルールに反映されていなかった。

 今までの(SAGBだけではない)ゲームブックはこの辺りがあまり自由が効かず、サイコロの目によって勝手に「どのタイプの戦士か」が決定されてしまうことが多い。例えば、「ドルアーガの塔」において防御重視タイプのギルガメスを作りたいと思っても、最初のサイコロの目で防御ポイントの数値が壊滅的に悪ければ、否応なしに攻撃型の主人公を作らねばならない(戦力ポイントの数値も悪かったら目も当てられないが)。例外は「ワルキューレの冒険」だが、場面や状況によっては魔法が使用できないことがあり、結果的に「魔法使いタイプの主人公」というイメージで冒険するにはそぐわないように思われる。
 それでも「ワルキューレの冒険」の魔法にも利点があり、最初に決める能力値や戦闘やサイコロの目が悪くても確実にダメージを与えられる「火の玉の術」や、減っていた体力ポイントを回復する「薬の術」は、ある意味で低能力値に対する救済措置的な側面を持っていた。「魔法で低い能力値を補う」という戦略は、ファイティング・ファンタジー・シリーズや初期のSAGBの戦闘では不可能とは言わないまでも困難であり、この魔法は戦略の幅を広げる「戦闘オプション」という性質を持つ。後述するが、『エクセア』も(限定的ではあるが)白兵戦に自信がなければ魔法戦を選択することができるという「救済措置」が用意されているように思われる。
 
 最初の能力値を決定する際のサイコロの目によって、難易度が劇的に変化するのは賛否両論があるだろう。「サイコロによるランダムな不公平」はない作品で言えば、例えば『眠れる竜ラヴァンス』は、最初の技量ポイントが十点と固定されていて、出立時の「運」は関係なく、作り手側も難易度も調整しやすい。また、「ワルキューレの冒険」では各巻のプロローグで能力値が改めて調整され、作成時の出目が低かった場合の救済策と難易度を揃える役目を果たしていた。
 TRPGでも初期にはキャラクターメイキングでランダム性を導入することが多かったが、時代が下るにつれて「自分のイメージしたキャラクターで遊びたい」という志向を持つプレイヤーの要請に応えるように「ポイント振り分け制」を導入するようになっていく。例えば「アドバンスト・ファイティング・ファンタジー(AFF)」も1989年の第1版では能力値はサイコロによるランダム決定に委ねられていたが、2011年の第2版(AFF2e)ではポイント振り分け制に移行している。
 
 『エクセア』は武器や初期設定だけでなく、魔法の使用や戦闘の立ち回り方といった点でも比較的自由度が高く、だいたいにおいて魔法戦か剣を交えての白兵戦かが選択できるようになっている(これは特に序盤の「聖なる森」の探索で顕著である)。惜しむらくは、一回魔法戦を選択すると、後は敵を倒すまで魔法を使い続けなければならない(つまり、白兵戦に移行できない)場面が多いことだろう。また、終盤では魔法を使う機会が激減するのも残念なところである。

 この作品は大雑把に言って序盤と終盤に分かれている。まずは双方向移動の「聖なる森」での探索、次にファンデムの王族となり、密かに侵攻準備を進めてきた西の大国ジェナンとの戦闘に挑んでからは単方向移動にシフトする。前半の「聖なる森」で出会う数々の挑戦者(NPC)は非常に魅力的で、個々の背景までもきちんと描写されているのは好感が持てる。
 例えば主人公のライバルたる傭兵ダーナ・ストゥティは、妹の結婚資金の調達のために「聖なる森」の戦闘コンテストに参加しているのだが、主人公は彼に資金援助を申し出るという選択をすることもできるし、問答無用とばかりに戦って殺してしまうこともできる。すると、後半の冒険でダーナの妹と遭遇した時の物語が(当然という気はするが)劇的に変わるのだ。あとがきで作者の宮原弥寿子が述べているように「倒す敵にも、親があって、恋人があって、赤い血が流れているような」NPCが満載である。こうした特徴的なNPCの存在によって、特に序盤は双方向移動でありながら物語に深みを出すことに成功している。
 
 前半の冒険でどのような行動を取ったかによって後半の展開が変わってくるのだが、ここでもプレイヤーは多くの洗練されたキャラクターと出会うことになり、ストーリー的にも盛り上がる。特に、後に行動を共にすることになる魔法使いパーシーと戦士コーラル、そして彼らの(そして主人公の)妻となる三人の王女との絡みなどは小説的にも読ませる魅力を備えている。
 例えば主人公を含めたこの三人が対ジェナン戦の軍議に参加していると、側近や参謀たちが主人公たちを小馬鹿にしたような態度を取ってくる。ここでうまく選択肢を選ぶと、王族の三女である剣士レイラが助け舟を出してくれ、事態が鎮静化し好転していくのだ。その他に、魔法に秀でた次女のリュウラが、鳥たちの力を借りて故郷エクセアの情報をもたらしてくれたり、予言を教えてくれりと、物語を進展させるのに不可欠なピースの役割を果たしている。
 
 惜しい点は、終盤になると観念論的な選択肢やエピソードが頻出し、お定まりの展開になることだろうか。描写力という点では優れたものを持ちながら、ストーリー自体の平凡さ、悪く言えば陳腐さが目立ってしまい、いまいち物語の世界に没頭できないのだ。例えば、ラスボスであり戦士コーラルの兄であるユージスとの戦闘では、主人公は否応なしに圧倒的な不利に追い込まれるのだが、その時に主人公が手にする魔剣・鸞凰飛翔剣(らんおうひしょうけん)を用いて状況を打開するシーンがある。ここで「剣に愛を込める」という選択肢を選ばないとゲームオーバーになるのだが、極悪人(とみなされている敵)が愛の力で改心するという物語構成はやはりありきたりで、王道過ぎるという気がしなくもない。
 この傾向は特に最後の戦闘からクライマックスで見られ、優等生的な選択肢とストーリーによって、ラストが大団円に持ち込まれる。エンディングで改心したユージスに、登場人物が「予言は成就した」「一生の宝となる仲間がいる」などという台詞を呟くのも、「ハッピーエンドの物語」であることを殊更に印象づけているように見える。『ドラゴンバスター』や「ドルアーガの塔」なども(結果だけを見れば)ある意味では凡庸な大団円であり、ゲームブックではそうした王道なものが多いが、この二作にはそれを補って余りある「描写の妙」があった。ところが『エクセア』は、あまりにも模範的すぎる文章に終始してしまっているように思われるのだ。
 
 ゲーム的な謎解きは非常に凝ったものが多く、しかも独りよがりなパズルではなくかなり論理的に作られているのは素晴らしいのだが、さすがに難易度が高いものが多い。あまりの難易度の高さゆえに、編集部が最後にヒントを与えているくらいである。例えば、クリアに必須のクイズでは十進法と八進法の区別の知識が必要となり、これは小学生のプレイヤーが解答するのは難しいだろう。
 また、プレイヤーは道中で女神アリアドネと遭遇するのだが、彼女は「ラドゥサとラドゥサを足すとアリアドネになる。その時一番小さいサリアはいくつか? ただし、ラドゥサ、アリアドネ、サリアはそれぞれ四桁、五桁、三桁の数字で、同じ文字には同じ数字が一つずつ入る」という、大人でも紙とペン、それに柔軟な発想が必要となる謎解きをしかけてくる(因みに、答えを間違えると原体力点が一点減るというペナルティがある)。
 このクイズも正解に辿り着くのは非常に困難である。しかし、こうした難解な謎解きを差し引いて考えても、ゲームとしての完成度は高い。これでクライマックスのストーリーにもっと惹きつける力があれば、歴代のゲームブックの中でも高い評価を獲得できただろう。

 このように、『エクセア』は総合的に見て及第点のゲームブックだが、同じく第二回ゲームブック・コンテスト佳作の新井一博・堀蔵人著『第七の魔法使い』はどうだろうか。
 プレイヤーは都市国家ヴィアドの最後の王位後継者。あなたの出生直後に暗黒の力を操る魔道女王ダウマヌスがヴィアドに攻め入り、占領される。あなたは魔法使いソージュの力を借りてその場を脱出し、ダウマヌス打倒のために力を蓄えていた。やがてあなたは練達の魔法使い《七賢人》の一人となって、女剣士トーナとともにダウマヌスを倒す旅に出る。

 本作は第一部と第二部に構成が分かれ、第一部は言わばイントロ、第二部が本題の魔法使いとしての活躍を描いている。第一部では敵の巣窟ヴィアドに入るまでの冒険譚を描いているのだが、主人公シリスティアは魔法が使えず、主に白兵戦で戦闘を処理する。方式は『ネバーランドのリンゴ』に似て、サイコロを振って七以上が出れば命中(若干の変動あり)という極めてシンプルなものである。一方、美しいトーナとともに敵の本拠地に入る第二部では、サイコロを使った戦闘は一切存在せず、主に選択肢の中に現れるいくつかの候補の中から魔法を使用して闘うことになる。
 特に第二部のストーリーは雰囲気が抜群で、最終ボスと主人公との関係や、後に主人公の妃となる美しき女剣士トーナや放浪絵師イッキックらとの絡みなどは秀逸の出来である。例えば、第一部で出会うトーナとは初対面こそぎこちないものの、第二部では心強いパートナーとして共に多くの戦いを経験する。そのうちにトーナと主人公は愛し合うことになるのだが、押しつけがましくない愛情物語が冒険の最中でも見ることができ、自然に感情移入できる物語展開は刮目に値する。

 また、それぞれの魔法の効果も高く、読者の想像の上を行く影響力とあわせて、白熱した魔法戦を体験できるだろう。具体的には、エネルギーの源である「陽の魔法」「月の魔法」「炎の魔法」「水の魔法」「循環の魔法」「大地の魔法」「暗黒の魔法」の七種類の魔法体系が設定されており、それぞれ複数の魔法が下位分類されているのだが、その一つ一つが個性的である。例えば「陽の魔法」はその名の通り太陽のエネルギーを使う魔法体系だが、ヴィザジンと呼ばれる「使うと大陸の半分が消失する」強力な魔法もあれば、ラストで重要な役割を果たす蘇生の呪文「アシス」もこれに含まれるなど、天才魔術師が使用するのにふさわしい魔法が用意されている。

 こうした魔法体系は、ゲーム作家である堀蔵人の影響が色濃く反映されているように思われる。『第七の魔法使い』は、新井一博がコンテストに応募した『ウォーロック・サーガ』を堀蔵人の力を借りて改作したものであり、堀蔵人は1987年に日本で二番目に発売された国産ファンタジーTRPG「フォーリナー」の世界設定や、RPG設定資料集『魔法王国シムルグント』の執筆を手がけている。
 「フォーリナー」では、キャラクターは「水、大洋、大気、太陽、火、火山、大地、月、平衡」という九種類のアライメント(元素)のいずれか一つを持つという設定になっており、『第七の魔法使い』の魔法体系に通じるものがある。堀蔵人はロード・ダンセイニやトールキンのような架空の世界を緻密に創造することを得意とするゲームデザイナーであり、そうした世界設定の妙が『第七の魔法使い』の作品背景を補強したのかもしれない。

 個人的には、第一部の戦闘システムはうまく機能しているが、肝心の第二部の魔法戦は成功しているとは思えない。使える魔法の選択肢が制限されているために、精鋭の魔術師という割にはいまいち活躍がぱっとしないのだ。例えば『パンタクル』では、パンタクルが使える箇所では十五種類の魔法全てが選択できて、それも威力の高いものから意外な効果を発揮するものもあり、「魔法」という神秘性と「天才魔法使いメスロン」という役割を思い切り演じることができた。選択肢で魔法を選ぶ形式の「ソーサリー」シリーズも、使える魔法は常に五種類と選択の幅が豊富だった。だが、『第七の魔法使い』では、多くて四つ、普通は三つ程度の選択肢しかなく、とても「魔法を使いこなす」という感覚に浸れないのである。
 また、魔法の威力に応じて消費する体力値が異なるのだが、その体力の減りが尋常ではない。となると、戦闘が一回終了するごとに体力回復の呪文(主にシリスとカナルと呼ばれる体力回復魔法)を頻繁に唱えなくてはならず、プレイヤーは手間がかかるだろう(「シリス」は月の魔法で、常に体力値を十五回復する力を持ち、「カナル」は陽の魔法で、サイコロを一個振って一以外が出ると体力値を三十回復することができる。カナルは威力が強い分、常に魔法が成功するとは限らないという欠点を持つ)。もっとも、この仕様によって「どちらかというとひ弱な魔法使い」(思ったよりも魔法を頻繁に使えない)というお約束のプレイを楽しむことができるようになっている。

 この「魔法の選択の少なさ」という点は、ジャクソンの『バルサスの要塞』の主要な欠点として安田均が論じているとおりだが(『ファイティング・ファンタジー・ゲームブックの楽しみ方』p. 49)、同様のことは『第七の魔法使い』にも言える。更に加えて、クリアするために体力の温存をするメリットを考えると、「そもそも魔法を唱えるか否か」の選択によって、より「魔法の選択肢」が減る。例えば「T&T」のマトリックス表(結果早見表)のようなものを使用するか、項目数を増やして(なんなら第一部を削って)もっと「縦横無尽に使える魔法使い」の自由さと迫力を前面に押し出した方が良かったのではないか。

 「七賢人」として覚醒する様子を描くのも大事だし、それもクライマックスを盛り上げるのに十分な役目を果たしているが、『第七の魔法使い』の肝はあくまでも魔人たちとの壮絶な魔術戦のはずだ。いわゆる「売り」を大事にしないで、その結果焦点が定まらない作品になってしまうのは、ゲームブックだけでなく全てのゲームや小説などの娯楽がたやすく嵌まってしまう陥穽である。

 ストーリー的には、ダウマヌスの配下である火・水・風・土の邪怪との決戦で手に汗握るスリルを楽しめ、また、常に付き従う女剣士トーナとの結びつきや父親との邂逅など、ドラマ的にも白熱する局面は多い。その一方で、『エクセア』と同じ弱点を抱えており、最後の女魔法使いダウマヌスとの戦いでは教科書的かつありきたりな展開になってしまう。実はラスボスであるダウマヌスはトーナの母親なのだが、トーナは母親とともに死の道を選ぶ。それに対して主人公が蘇生の呪文「アシス」をかけるかどうかという問いは(筋にはあまり影響はないが)模範解答としては「かける」一択だろう。こうした、いわゆるライトノベル的な展開を熱望する読者にとっては胸が熱くなるシーンだが、意地悪な見方をすれば、「優等生的な選択や筋立てが前提とされていて、実質的な選択肢になっていない」という評価もありうるのではないか。
 
 第二回ゲームブック・コンテストにおいて「応募作品は平凡にまとまったものが多い」(「アドベンチャラーズ・イン」13号)と評されたのは、こうした規定路線的なストーリー展開が多いためではないだろうか。こうした「王道の物語」が好みな人には良いが、特にコンテストで入選を果たすには、それなりの新奇性が要求される。型にはまった作品が多いというのは、それだけ今まで作られてきたSAGB作品の質が高かったことの証でもあろうが(特に「ソーサリー」や「ドルアーガの塔」の影響が大きかったのだろう)、コンテストの評でも「立派な出来の「ソーサリー」のコピー作品は要らない」と評者が投げ込みペーパーの「アドベンチャラーズ・イン」スペシャル1998年版で発言しているとおり、もっと突き抜けた個性を見せても良かったのではないか。その象徴的な作品が、『エクセア』と『第七の魔法使い』という気がしないでもない。

 ところで、『エクセア』のエンディングを見る限り、どうも続編が作れなさそうだと感じる読者は多いだろう。結果的にSAGBの最後の作品となった同じ作者である宮原弥寿子の『ギャランス・ハート』は、『エクセア』の続編とは言わないまでも、はるか後世の物語という体裁を取っており、世界観は共通しているが、『エクセア』とは直接の繋がりは希薄な作品である。
 主人公は女傭兵のアリス・カエン。ある日、僧侶のキーアの護衛というおいしい仕事にありついて有頂天になっていたが、キーアの行く先は、生きて戻ったものがいないという妖魔界だった……。

 いつもながら、宮原弥寿子は人を惹きつけるオープニングを作って、問答無用でプレイヤーを物語世界に巻き込む手腕に優れている(これは社会思想社から出た『フォボス内乱』というSFゲームブックにも表れている)。作者が『エクセア』で見せた個性的なキャラクターの描写は『ギャランス・ハート』でも健在である。主人公の女傭兵アリス・カエンの俗的ではあるが魅力的な特性に加え、司祭キーアの堅物さや一緒に旅をすることになる妖魔のヴァレリアに戦士フレディの調子の良さなど、NPCを際立たせる技術は卓越している。こうした様々な背景や特性を持つキャラクターが物語全般に効果的に配置されており、ストーリーを魅惑的にすることに成功していると言えるだろう。

 だが、こと『ギャランス・ハート』については、宮原弥寿子が得意とする圧倒的な描写力は影を潜め、ゲーム的な側面が色濃く前面に押し出されていて、逆に言えば物語性は大幅に犠牲にされている。複雑で、最初は知られていなかったキーアが旅立つ事情、純朴なキーアに徐々に感情を許していく主人公など、ストーリー的に優れたものを持ちながらも、文学的な書き込みが希薄なために、どうしても表面的な印象は拭えない。

 本作は、戦闘などにおける処理や能力値の増減という点ではむしろ割り切った考え方をしていて、アルファベットの略で能力値を表したり、能力値の変化や戦闘の勝利などにもあまり凝った言い回しを用いていない。例えば戦闘が起こる場面でも余計な描写は一切ない。ただ敵のデータ(TP(技術点)、HP(生命力)、AP(武器)、PP(防具)の四つ)が機械的かつアルファベットと数字だけの簡素な形で提示され、プレイヤーはサイコロを振って戦闘を行うだけなのだ。戦闘システムは『ネバーランドのリンゴ』と極めて近く、敵の分のサイコロを振る必要はない。自分の分のサイコロだけを振って、それに自分の技術点(TP)を加えた値が敵の技術点(TP)以上ならば攻撃は成功するという、プレイヤーの負担にならない方法を採用している。
 戦闘ルールに見られるように、『ギャランス・ハート』はテクニカルかつコンピューターゲーム的な能力値の表示(とその処理)に重点を置いており、その影響もあってか相対的にストーリー性と場面描写にはあまり注意を払っておらず、結果として凡庸な作品にとどまっている。宮原弥寿子のストーリーテリングを生かすための「文学性」や何らかの凝った描写が、この作品ではごく一部のパラグラフ(特にキーアが生贄になるアナザー・エンディングの文章は秀逸である)を除くとあまり現れず、せっかくのストーリーの良さを生かしきれていないのである。『エクセア』は物語的に定番の展開を迎えたが、『ギャランス・ハート』もどうしても場面ごとの盛り上がりがなく単調で、突き抜けた個性が出せていない。ゲームブックはゲームであると同時にブックで「読ませる」ものでなければならないということが、この作品では一部欠けているのである。

 もちろん、肝心な場面では主人公(アリス・カエン)の気持ちなどが書かれているのだが、それ以外の冒険の途上で、ただ向かってくるだけの敵や無味乾燥な数値を出されてしまうと、それだけで作業をしている気になってしまう。せっかくのSAGB最後の作品だというのに、この出来ではあまりに幕引きとしては悲しい。特にゲーム的には、共に旅する仲間ができたり、キーアに感情値と呼ばれる特殊な属性があったりと、発展的な広がりを予感させる装置が用意されていながら、それが十分に活用されていない。『エクセア』や『フォボス内乱』で見せた卓越した筆さばきは影を潜め、『ギャランス・ハート』はあくまで数式や能力値の増減を機械的に設置し、余計な文章を極力省いた節が見受けられるが、それが優れたゲームブックを作る要件には足りないことは明らかだ。
 つまり、『ギャランス・ハート』は、ストーリーの軸(あらすじ)は魅力的だが、ゲーム的なデータを重視したために物語としての書き込み不足が目立っている、という特徴を持っているように見受けられるのである。

 既に述べたように、『ギャランス・ハート』以降、SAGBのレーベルとしてのゲームブックは出版されていない。これは、SAGBの質が下がったということにも一因があろうが、むしろゲームブックというジャンル自体の全般的な人気の低下と、読者層(購買層)の縮小などが主な要因だろう。また、いくつかの出版社が低レベルでほとんど作品としての体をなしていないゲームブックを量産したためとか、ちょうど同時期に飛躍的進歩を遂げたコンピューターゲームの進化に押されたという理由も少なからずあるだろう。
 前者の、ゲームブックの「粗製濫造」という意見は昔から唱えられているが、額面通りには受け取れない面もある。例えばファミコンのカセットゲームでは「粗製濫造」とも言える駄作も多く登場したが、それ以上に傑作を多く生み出したために廃れることはなかった。ファミコンという媒体はスーパーファミコンの登場と共にその地位を明け渡したが、それはスーパーファミコンがファミコンの性能面での上位互換であったためであって、ファミコンソフトが陳腐だったためではない。それと同様に、仮にゲームブックに「粗製濫造」の側面があったとしても、それを凌駕する傑作が数多く生まれ続けていれば生き残る道はあったようにも思われる。
 また、後者については、コンピューターゲームが爆発的に改良されていくにつれて、受動的に(人間が手間暇のかかる作業で数値をいじったり、戦闘の際にサイコロを振る手間などがない)一人で楽しめるゲーム媒体が増えたことが大きい。ゲームブックよりも(ゲーム面での処理という意味で)上位の遊び道具である媒体が、ゲーム専用機も含めて世の中に溢れ出たのは、日本のゲーム界では衝撃の出来事だった。どちらかというと低年齢層向けの双葉文庫から出た「ファミコン冒険ゲームブック」は、ファミコンを持っていなくても安価でファミコンの疑似体験ができるという利点があったが、実際にファミコンが人口に広く膾炙してしまえば、代替品は必要ないと考えるのはごく自然なことだろう。
 
 つまり、読書のようにこちらの「やる気」や「積極性」が必要で、かつ数値的処理も一人で行うソリティア的ゲームブックよりも、ファミコンをはじめとする一人用ゲームの方が、少なくとも大衆には受け入れられたというわけだ(しかし、筆者はコンピューターゲームにない魅力がゲームブックにあると今でも思っている)。そして、『ギャランス・ハート』は、悲観的な見方になるが、SAGBだけでなく、ゲームブックブームの終焉を告げる弔砲の役割を果たしたと言えるのではないだろうか。

 ※本連載におけるSAGBの「ゲームブック」の解説としては最終回になります。次回は番外編(補筆)として、SAGBのTRPGである「ドラゴン・ウォーリアーズ」を取り上げます。

◆書誌情報
 『エクセア』
 宮原弥寿子(著)
 東京創元社(1989/10/13)絶版

 『第七の魔法使い』
 新井一博・堀蔵人(著)
 東京創元社(1992/6/26)絶版

 『ギャランス・ハート』
 宮原弥寿子(著)
 東京創元社(1992/8/28)絶版

■参考文献
 『ダンジョンズ&ドラゴンズ セット1:ベーシックルールセット』
 Gary Gygax and David Arneson
 株式会社新和(1985/6)

 『トンネルズ&トロールズ ファンタジーRPGルールブック』
 K・S・アンドレ(著)安田均(監修)
 社会思想社(1987/12/30)絶版

 『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』(上)
 S・ジャクソン/I・リビングストン(監修)安田均(訳)
 社会思想社(1990/12/30)絶版

 『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー』(下)
 S・ジャクソン/I・リビングストン(監修)安田均(訳)
 社会思想社(1991/2/28)絶版

 『アドバンスト・ファイティング・ファンタジー 第2版』
 グレアム・ボトリー、マーク・ガスコイン&ピート・タムリン(著)安田均他(訳)
 株式会社書苑新社(2018/4/30)
 新紀元社(2023/2/4)(改訂版)

 『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』
 安田均(著)
 社会思想社(1990/8/1)絶版
 
 『フォボス内乱』
 宮原弥寿子(著)
 社会思想社(1991/7/30)絶版

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2025年10月20日月曜日

もうひとつの「運」の話。 FT新聞 No.4653

おはようございます、枚方市のスターバックスから杉本です☆
入稿準備に追われています!
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」のサプリメント、モンスターで遊ぶ「ヒーローズオブダークネス」の入稿に、取り組んでおります☆
さて、今日は前回に引き続きまして、今日は運についてもうひとつ、ご紹介したいお話があります。
それは、「運」と「ゲームの面白さ」についてです。
私がかつて大いにハマった電源系デッキ構築ゲーム「ハースストーン」のお話をします。


◆ランダムなカードがコスト安「ハースストーン」。
今回ご紹介するのは、私が昔ハマっていた、大好きなデッキ構築系のカードゲームです。
それは、「ハースストーン」という、海外産の電源系ゲーム。
このゲームではある時期から、「ランダムな3枚のカードから、好きなカードを1枚選ぶ」というカードが登場するようになりました。
この系列のカード、出た当初は「運ゲー(運で決まってしまうゲーム)」の集大成だと言われ、使わない人も一定数いました。
しかし、ゲーム環境が続くにつれて、そうではないことが明らかになっていきました。


◆どこがメリットか?
このシステムは本当によくできたものだと明らかになったのは、ランダムカードを使う有名配信者たちによってでした。
まず、彼らは「ランダムカード」を使う前から、その候補になるカードの種類をすべて把握していました。
たとえば「ゴブリンカード3枚がランダムに出現する。そのうちの1枚を手札に加える」というカードを使ったなら、「ゴブリンカードは全部で11種類。そのうちここで役に立つ『当たり』カードは『ゴブリンの突撃兵』と『ゴブリンの斥候』の2種類! さらに、残るカードのうち4種類は次のラウンドに役立ちます。だから、引いたほうがいい」などと解説しながら、ゲームを進行したのです。
それまで、プレイヤーたち、特に日本のプレイヤーたちは「戦略」を至上とし、「運」を「ゲームをつまらなくするもの」としか受け取っていないきらい(傾向)がありました。その価値間に基づいて、「ランダムカード」に拒絶感を示したわけです。
しかし、配信者たちは「ランダムカード」を駆使して戦うことの素晴らしさを、具体的に示してみせてくれたのです。
「ここでAというカードが出た場合にはそのカードを使って、次にこうします。ただし、Bというカードが出た場合にはそちらを取って、こうします」
単なる「当たりと外れ」ではなくて、カードの種類ごとに細かく枝分かれした戦略を立てる。その上で、「ランダムカード」を使うかどうかを決める。そこにあったのは、「運ゲー」とは正反対の姿勢と成果でした。


◆「選択肢」への習熟。
この戦い方を観ながら私は、「これ、自分のゲーム制作に応用できるな」と感じました。
ランダムなできごとが発生して、それに対してストーリーの展開が大いに変化するゲーム。
「運と実力のハイブリッド」です。
「30分で遊ぶ1人用TRPG ローグライクハーフ」には〈できごと〉というランダムな表があります。
これは、ある別のゲームから着想を得たものですが、アイディアを素晴らしいと判断できた材料のひとつが、この「ハースストーン」の「ランダムカード」でした。
ランダムはゲームをつまらなくする、という考え方は確かにあります。
しかし、私はランダムを「ゲームをより面白くする」使い方がキチンと存在すると、主張したいと感じました。
大仰な言い方になりますが、日本にはまだまだランダムの魅力が浸透していないと思います。
私は、ランダムによって複雑に枝分かれするゲームシステムと、そのシステムが織りなす物語性を「ローグライクハーフ」で表現したい。
あるいは、ゲームブックにこのシステムを還元することで、その進化した形態をお見せすることもできるのではないか、などと考えてもいます。 

今回はこれにて。
それではまた!!





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2025年10月19日日曜日

Re:『城塞都市ドラッツェン』アランツァワールドガイド&都市サプリメント&新職業 FT新聞 No.4652

おはようございます、編集長の水波流です。
今日はこれまで再配信の機会のなかったローグライクハーフの各種データから、
『城塞都市ドラッツェン』を再配信いたします。
初出はなんと2023年12月。もう2年近く前になるのですねー。

・アランツァワールドガイド Vol.9(2023/12/19、12/26)
・都市サプリメント(2023/12/29)
・新職業【錬金術師】(2024/1/2)

大陸中央部にある軍事色の濃い街ドラッツェン。
龍を意味する古い言葉に端を発するこの国は、山岳部に位置する多種族国家です。



「アランツァワールドガイド」Vol.9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

ラクダ人であるカメル教授が城塞都市ドラッツェンにたどり着いたのは、春先のことだった。
カメル・グラント教授はいま、大陸を旅してまわっている。
高地にあるこの街は寒く、朝夕には濃い霧が出る。
三方を河に囲まれたこの都市は堅牢だが、たどってきた道のりは決して平坦なものではなかった。
龍人たちが創設した街を人間が奪ったという、血塗られたはじまり。
巨大クリーチャーとの戦い。
ゴーレムナイトの導入。
錬金術師の台頭。
ウォー・ドレイク戦役。
この街を彩る要素の多くには、戦が絡んでいる。


◆検問と戦争。
カメルは旅の仲間であるアレス・マイモローとともに、この街へと入る。
衛兵たちはいぶかしむような表情を投げつけた。
神聖都市ロング・ナリクからの越境である。
ふたつの都市の間では数十年もの間、戦争が続いている。
スパイの入国を、疑ったのだ。

アレスは懐から書状を出して、ハラリと見せる。
彼の妻である賢者ティーボグが書き記した、通行許可証である。
衛兵たちは書状とアレスたちを交互に見ると、結局、街への入境を許可してくれた。

「要するに、そういうことなんだよ」

衛兵たちから十分に離れてから、アレスが言う。

「戦争は長く続きすぎた。今でも兵士たちどうしの戦いはあるが、民間の交易は行われている。研究者だって、こうして通れるってわけさ」

慎重なカメルは首を振って、彼の意見を否定する。

「運がよかっただけ、かもしれない。あるいは、偉大なる七賢者の書いた書状を持たない者は、そんな風に通れるとは限らないだろう」
「そうだな。だが、少なくとも今日は通れたな。とりあえずは、そのことを喜ぼう」

カメルはうなずいて、街に視線を向ける。


◆高地の街。
河に囲まれた小高い丘。
城壁で囲まれた街に向けて、いくつかの石橋がかかっている。
それぞれの橋には城門があって、有事のさいには閉じられる。
堅牢な街である。
城門の高さは5メートルほどあって、「人間以外」の市民がいることを窺わせる。
空には小さなドレイクが飛んでいて、その姿や鳴き声が、薄くかかった霧の向こうからときおり聞こえる。


◆龍人たちと銅龍セドラク。
街の中央にある広場にたどり着く。
噴水の真ん中には、精悍な戦士が龍を足の下に敷いて、旗を掲げた銅像が建っている。
人間が龍人を征服したことを示す、モニュメントである。

ドラッツェンという名前が示すとおり、この街はもともと龍人たちのものだった。
龍人は強力な種族だったが、繁殖力において人間に劣っていた。
長い戦を続けた末に、龍人は街を捨てて南へと消え、ドラッツェンは人間の都市となった。
かつて龍人は、セドラクという名前の龍とともに、この街に住んでいたという。
古い文献によれば、セドラクは街の守り神として崇められていた。
だが、人間と龍人の戦を経て、龍がどうなったかについては諸説ある。
傷ついて死んだとも、龍人とともに去ったとも、人間が街を奪取したさいに裏切って人間側についたとも言われている。
ただひとつ確かなことは、金龍が今も街にとどまる水上都市聖フランチェスコ市とは違い、この街にはもう龍がいないということだ。


◆街の【少数種族】たち。
ドラッツェンの街は高地の山奥にあるが、歩いている種族は多種多様だ。
といってもエルフやドワーフが特別に多いわけでも、ゴブリンやオークのような【悪の種族】に溢れているわけでもない。
豚の顔をした人間型種族……〈豚人〉。
4本の脚と4本の腕を持つ、クモに似た少数種族〈アラネア〉。
人間の2倍近い身長をもつ〈半巨人〉。
毛むくじゃらの狼や猫に似た〈獣人〉。
たくさんの少数種族が、人間などの【善の種族】に混じって歩いている。

「侵略の歴史さ。里を焼かれた種族が、街で暮らすようになった」

好奇心から視線を向けていたカメルに、アレスがそう告げる。

「そうだな……。戦いは世の常だが、彼らは幸せなのだろうか?」

そう言って目を伏せるカメルの長いまつ毛を見ながら、アレスは何も答えなかった。
カメルは疑問を投げかけたわけではない……「幸せには見えない」と、反語的に言っているのだ。
故郷を追われ、家族や友人を殺された末に、街に取り込まれて生きる少数種族たち。
その身を案じているのだろう。


◆大量の難民と「テホ」。
高低差のある道を歩く。
高いところに立つと、城壁の向こうに流れる川が見える。
ゆったりと流れる赤錆川は、その名前のとおり雨季には川が赤色に濁る。
かつてこの川を上ってきた、難民たちがいたという。

この川を上った難民たちは〈ノーム〉たちだった。
彼らはドラッツェンの北西部に集落を作り、先住者である〈獣人〉たちや、後に住み着く〈半巨人〉たちとともに暮らした。
その地域は「テホ」と呼ばれた。
テホの民はドラッツェンとは一定の距離を置きながらも、その一部は城塞都市に流れ込んで市民となった。
ドラッツェンには〈半巨人〉の騎士や〈獣人〉の医師、〈ノーム〉の錬金術師などが居住し、一定の地位を獲得している。


◆レラヴィリアの民。
宿についた2人は、テーブルにつく。
宿に入った瞬間から、においが気にかかる。
糞尿のような……。
においの根源を目で追うと、そこには〈豚人〉が座っている。
どうも、彼か彼女か分からないが、においはそこから漂ってきているらしい。

他の宿を探すべきか、カメルは迷う。
だが、山中にあるドラッツェンの日暮れは早い。
もう日が暮れているのだ……くさいからといって、今さら宿を変えるリスクを取りたくはない。

店員が〈豚人〉に、食事を持っていく。
〈豚人〉は2人の前で、その頭を外す。
衝撃とともに、2人は〈豚人〉の「中身」を見る。
中には色白で金髪の、美しい青年が入っていたのだ。
カメルとアレスが〈豚人〉だと思っていたのは〈人間〉だったのだ。
好奇心に抗うことができず、カメルは青年に近づき、尋ねる。

「そのかぶりものは? 何のためなのか、訊いてもいいかな?」

青年は屈託のない笑顔をカメルに見せて、答える。

「狩りです。我ら『レラヴィリアの民』は、〈丸々獣〉という生きものを仕留めるためにこの格好をするのです」

いささか早口になりながら、青年は答える。
カメルはうなずく……このにおいも、狩りのためについてしまうものなのだろう。
「レラヴィリア」とは「自由」を意味する言葉で、ドラッツェンにかつてあった王国の名前だ。
王国はすでに滅んだが、レラヴィリアの民は今もドラッツェンの周辺や都市内で、こうして暮らしているという。


◆ウォー・ドレイク戦役。
カメルとアレスは食事を終えると、うっすらと暗くなりつつある外を歩く。
ギャギャギャという鳴き声が、遠くから聞こえる。
霧の晴れた空には幼いドレイクが、叫び声を放ちながら飛んでいる。
調教師が「放牧」をしているのだ。

かつてウォー・ドレイク騎兵は、ドラッツェンの象徴そのものだった。
凶暴なドレイクが空を埋め尽くし、さまざまな【少数種族】たちを制圧した。
神聖都市ロング・ナリクを代表する騎士、飛翔槍士たる鳥人たちに死をもたらした。
しかし、ドラッツェンの経済力は、その強大な軍事力を支えられるほどに強靭ではなかった。
いちどの遠征を終えると牛一頭(1日に1頭といううわさもある!)を必要とするウォー・ドレイクの維持費用はドラッツェンの財政に大きな打撃を与え……大幅な縮小が行われた。


◆ゴーレムナイトの導入。
ウォー・ドレイクを城塞都市ドラッツェンが「手なづける」以前には、〈ノーム〉たち【からくり術師】が研究開発した〈ゴーレムナイト〉が、この街の主流だった時期もあった、という。
巨大なゴーレムの中心に乗り込んで、操縦することで巨人やドレイクたち【巨大生物】と戦う。
ときには〈ゴーレムナイト〉どうしで戦うこともあったという……だが、これも歴史とともに衰退していく。
古い時代のゴーレムの頭のなかには、今は稀少となった金属オリハルコンが使われていた。
これが枯渇したために〈ゴーレムナイト〉の生産ができなくなってしまった。
それでも、アランツァの世界にはこの巨大なゴーレムによる戦いの痕跡や記録がいくつか残されている。


◆半巨人たち。
城を遠くから眺めようと、アレスが提案する。
カメルは同意して、連れ立って歩く。
城の門には板金鎧に身を包んだ、大柄の騎士が立っている。
門の左右に立つ騎士の、右の人物だけがやけに大きい。
〈半巨人〉が、銀色に輝く鎧に身を包み、門を守っているのだ。
そのたたずまいは堂々としていて、誇らしげですらある。

アレスは興奮して、その様子をスケッチしはじめる。
生物学者であるカメルは感動して、〈巨人〉の歴史に思いを馳せる。

〈巨人〉という種族はもともと、人間だったと言われている。
魔力だまり(ノード)の放射に当てられると、クリーチャーは自分自身の欲望に応じた姿へと変容する。
このことを皮肉まじりに「願いを叶える」と表現する学者もいるが……〈巨人〉はなんらかの理由で「もっと大きくなりたい」と思った、数人の人間たちからはじまったという説がある。
もっとも、この説は北方の蛮族都市フーウェイなどでは真っ向から否定されていて、〈巨人〉たちはより原始的な、かつての「汚れていなかった」頃の人間の姿だと彼らは主張する。

学者たちの意見がどうであれ、〈半巨人〉は〈巨人〉の子孫である。
代を重ねるごとに肉体的に小さくなっていったが、その理由は明らかではない。
〈巨人〉の食性はバラバラで、人を食うものもいる。
しかし、身長3メートルていどの〈半巨人〉になると、この性質を受け継いでいる者はいない……人間と同じものを食べる。


◆武器と防具、そして錬金術師。
三方を河川に囲まれたこの街の「最後の一方」は、スォードヘイルの切り立った山々に面している。
この山地には有用な鉱物がよく採れる……城塞都市ドラッツェンの「産業」といえば、鉱物なのだ。
かつてはゴーレム製作に欠かせないオリハルコンが採掘されたが、今はこの資源は枯渇してしまった。
現在は武器や防具に用いる「アダマンタイト」と「カーグ鋼」をもとに、優秀な武具を製作する。
これらの武具は彼らの軍事力になるだけでなく、輸出によって経済面からもこの街を支えている。

街外れにある採掘場では、〈ドワーフ〉たちがつるはしを振るっている。
それを眺めながら、カメルは教え子の1人の話を思い出す。
錬金術師のマグスは両親とともに、この街を亡命したドラッツェン人なのだ。
わずか9歳の頃から、非常におとなびた性格の生徒であった。
面接の席で彼は、聖フランチェスコ市への亡命理由を尋ねられた。

「先生方はきっと、ドラッツェンの錬金術師たちが、どんな仕事をやらされていたかご存じないでしょう。私の両親は錬金術師だから、実際にあの街でどんな業が行われていたか、知っています」

続きを待つ面接官の教師たちを前に、長い沈黙が訪れる。
その末に彼は、こう答えた。

「戦が近づくと、兵站(へいたん)の備蓄を行いますよね。そのなかにはコビット爆弾のような、火薬を用いるものがあります。でも、ドラッツェンでは火薬の材料のひとつ、硝石が不足気味なんです」

マグスはひと呼吸置いて、言った。

「ところで、人体の成分をご存じですか。水35リットル、炭素20kg、アンモニア4リットル、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100gです。だから……ドラッツェンの軍部は平民たちのところにやってきて、最近亡くなった人間の遺体を『徴収』します。死んだ人々の肉体をかき集めて、硝石を手に入れるために……。」

そして、その硝石を抽出するのは錬金術師の仕事、というわけだ。

「そのこと{圏点:小さい黒丸}だけ{/圏点}に耐えられなかったわけじゃない。あの街はそういうところなんです。たくさんの【少数種族】と、合理的な思想。魔力を蓄えたクリーチャーが、生きたままつながれている地下があるというウワサもある。もっとむごたらしいものだって……。」

吐き捨てるように、マグスは言った。

「そういうことが重なって、両親はあの街を捨てました。俺だって、あの街で育つよりも、人の心がある魔法使いになりたい」

少しうつろなマグスの瞳。
彼を見つめるカメルの瞳には、涙が浮かんでいた。


◆まとめ。
カメルとアレスは城門から出て、この街をあとにする。
この街がアランツァの他のどんな都市よりも堅牢で、強大な軍事力を蓄えていることは疑いようがない。
北から攻め込む【巨大生物】の脅威に耐えるために、彼らは「するべきこと」を選んできた。
生き延びるために彼らがしてきたことは隠されていて、街を歩くだけでは分からない。
だが、たとえ明るみになったとて、誰がそれを「ひどい」と言えるのか。
恐るべき〈巨人〉たちにドラッツェンが敗北したら、次は他の街だ。
この街が食い止めているからこそ、アランツァの都市は危うい均衡のなかで存在できているに過ぎない。

カメルはドラッツェンの支配者たちが住む城を見やる。
今の領主である姫将軍ジャルベッタが住む、灰色の城を。
振り返って眺めても、街は答えない。
2人はドラッツェンの前を流れる赤錆川に浮かぶ、一隻の船に乗る。
城塞都市ドラッツェンを去り、チャマイの街を目指すのだ。

そこにたどり着いたなら、カメルの旅はふたたび1人に戻る。
アレスの最終目的地は、からくり都市チャマイである。


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↓「城塞都市ドラッツェン」by Huargo
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/CarneReina19B.jpg

↓「アランツァ:ラドリド大陸地図」by 中山将平
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/MAPofARANCIA.png

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都市サプリメント:「城塞都市ドラッツェン」
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_SUP_Dratzen.txt

新職業【錬金術師】
https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_NewClass_Alchemist.txt

呪文の力に頼ることなく、物質と生命の創造を専門とした職業に就いた者を【錬金術師】と呼びます。
幸運点を基準とする主人公で、怪物の生産を可能とします。


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2025年10月18日土曜日

FT新聞1ウィーク! 第662号 FT新聞 No.4651

From:水波流
「テセウスの船」という話がある。船の部品を1つずつ交換していき全ての部品が置きかわった時、それは元のテセウスの船なのか?という思考実験だ。
ところで私の愛用するAirPodsProは、中古で購入したら保証が残っていたので、せっかくだからとすぐにAppleでバッテリー交換をしてもらった。すると両耳イヤホンとケース、全て消耗しているので無償で新品と交換しますよと言ってくれ、店舗奥から新しい1式が。
ん?では私が購入したものは物体ではなく概念だったのか。
というテセウスのAirPodsProの話。

From:葉山海月
「寿司の中のヴィラン捨てといて」
見たら「びらん」でしたー!
さらに間違えて「ばらん」を「びらん」と信じ切ってましたー!

From:中山将平
僕ら、明日10月19日(日)「京都パルスプラザ」で開催の「関西コミティア74」にサークル参加します。
ブース配置は【G67】です。
11月にはまた色々イベントに出展する予定がありますが、10月はなんとこのイベント1つだけしか参加予定がありません。
1人用TRPG「ローグライクハーフ」や「ゲームブック」、「モンスター!モンスター!TRPG」等々を持ち、僕中山が現地にてお待ちしております!!
ぜひ遊びにお越しいただけましたら。


さて土曜日は一週間を振り返るまとめの日なので、今週の記事をご紹介します。
紹介文の執筆者は、以下の通りです。
(く)=くろやなぎ
(明)=明日槇悠
(天)=天狗ろむ
(水)=水波流
(葉)=葉山海月

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■10/12(日)~10/17(金)の記事一覧
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2025年10月12日(日)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4645

アランツァクリーチャー事典 Vol.21
・アランツァ世界に生息するクリーチャーたちのデータや背景をご紹介する「アランツァクリーチャー事典」。これから3回にわたり、【家畜、騎乗生物】の情報をお届けします。
今回登場するクリーチャーたちの多くは、敵としてのステータスだけでなく、「従者」としての能力値や特殊技能も持っています。強力だけど維持費もかかる〈ウォー・ドレイク〉と〈エレファス〉、地形によっては大活躍しそうな〈大亀龍〉と〈大グモ〉など、特色ある【騎乗生物】を従えて冒険したり、そんなシナリオを作成したりするのも楽しそうですね!
(く)


2025年10月13日(月)杉本=ヨハネ FT新聞 No.4646

運ってなんだい?
・田林洋一氏の連載「SAGBがよくわかる本」の記事のなかに、運についての言及がありました(No.4640)。
確率論者でありながら、同時に運も信じているという杉本氏は、「運ってなんだろう?」という問いかけに対しひとつの答えを持っているそうです。
それは「ここ一番」の大勝負、おそらくは人生で最も大事な、たった1回の勝負に勝てるかどうかということ。
誰だって勝つことも負けることもありますが、通常時の勝ち負けと、特別な機会の勝ち負けとでは、意味づけの濃淡が変わります。
勝っても負けても、意味が乗ることは面白いから、人はゲームに挑むのかもしれませんね。
(明)


2025年10月14日(火)中山将平 FT新聞 No.4647

ローグライクハーフ、僕はこれ強いと思います3!!!
・イラストレーター中山将平氏による、とっておきのローグライクハーフ情報、好評につき第3弾!
今回のテーマは、「手がかり」、「2人プレイの時の従者」、「敵の逃走」……の3点。
ローグライクハーフにある、「手がかり」という謎の存在。
多くの場合は「d66を振る時に消費して使用し、十の位が1に固定される」というもの。
そんな「手がかり」の使い方の『手がかり』他、2つのテーマも必見です。
ローグライクハーフをはじめたての方も、中級レベルの方も参考にしつつ、よきローグライクハーフ・ライフの助けとしていただければと思います。
好評なら第4弾もあるとのこと!是非ご感想をお寄せください!
(天)


2025年10月15日(水)ぜろ FT新聞 No.4648

第9回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第460回です。
奴隷商人に売られた姉たちを救うため、「2回目」の旅をはじめた主人公ミナ。「1回目」の旅との違いは、一緒に旅をする仲間がいることです。
森の入口での野営、闇エルフの隠れ里での情報収集、そして時計塔の探索…。どれもミナが「前回」の旅でも経験したはずの場面ですが、仲間の存在は「今回」の旅の展開にどんな影響を与えるのでしょうか?
(く)


2025年10月16日(木)岡和田晃 FT新聞 No.4649

明け方の時
・この春からブエノスアイレスに移住されている岡和田氏から、詩が届きました。
地球の裏側との時差は丁度マイナス12時間。つまり、この「明け方の時」が皆さんの元に届いたとき、岡和田氏は「夜」を過ごされているわけです。
私はこの詩を受け取ったとき、霧煙るケルトの森の夜のような、不穏で幻想的な雰囲気を感じたのでした。
(水)


2025年10月17日(金)ぜろ FT新聞 No.4650

【ぼうけん! おばけのもり】ゲームブックリプレイ
・プレイヤー視点とキャラクター視点を交えた独特の語り口による、ぜろ氏のリプレイ第461回……
ではあるのですが、今回のリプレイのプレイヤーは、ぜろ氏の甥ちゃん氏!
プレイ時点ではもうすぐ小学生の甥ちゃん氏は、本を読むこと自体はあまり好きではないタイプ。
けれど、ぜろ氏が取り出したるは、子供向けゲームブック『ぼうけん! おばけのもり』!
可愛いイラスト満載で、甥ちゃん氏も興味津々!
さてさて、甥ちゃん氏の分身「りすのりっくん」は、「おばけのもり」にある「おうごんのどんぐり」を手に入れられるかな?
子どもにもゲームブックに興味を持ってもらいたい…そんな親御さんの参考になるかもしれません!
(天)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今週の読者様の声のご紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひとことアンケートへのご意見をご紹介します。
紙面の都合で、一部省略させていただくかも知れませんが何とぞご了承くださいませ。
すべてのお便りは編集部が目を通し、執筆者に転送しておりますので、いろんなご意見やご感想をぜひお送り下さい。

↓↓

(ドロシー!さん)
・月曜の記事「ひとつ、いやふたつ……!!」について
「ウルトラン」「魔矢を継ぐ者」「悪魔召喚シリーズ」「剣豪推参」と、完結が待ち遠しいゲームブックのひとつである「ガルアーダの塔」が、(厳密には続編ではありませんが)復活するのに狂喜しました。
「ガルアーダ」の魅力のひとつは仲間との人間関係から生まれるドラマでもあり、それがどう活かされるのか、いまから楽しみです。

(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
私も書きかけの作品の中はどれも完結させたいと思っています……時々未完作品のことを思い出しては、いい終わらせ方の糸口はないか考えています。
その流れの中で「昆虫都市」と「ガルアーダの塔」のローグライクハーフ版を出すことを思いつきました。
「昆虫都市」はゲームブック版も出したいので、続きを出す見込みが立っていない「ガルアーダの塔」のゲームブック版とは、また事情が異なりますけども。
ちなみに、挙げていただいた未完の作品の中で最も完結の可能性が高いのは「魔矢を継ぐ者」です☆


(蒙太辺土さん)
『ガルアーダの塔』文字通りの"大"復活!
飛翔騎士の観測者「どういうことだ…塔が"伸びている"!」
経済という非情な蜘蛛の巣に絡め取られ命脈を絶たれたかに思われた『ガルアーダ』。
しかし時を経て今、大復讐戦(勝確!)の大号令が放たれた!というテンションで月曜の記事を読みましたっ。狂喜&乱舞でございます!いや〜楽しみ過ぎる。
そして最新作『死霊沼の聖母』!
まだ2つしかタイルめくれてないですがこの時点で既に楽しい!そして濃ゆい!休みの日に集中没頭して再"潜入"する所存です。ローグライクハーフ者として、ファンタジー者として、がっぷり四つに組まねば、という気合いが自ずと沸き上がる作品だと感じています!
冒険達成のあかつきには改めて感想を送らせて頂けますれば…!

(お返事:杉本=ヨハネ)
ありがとうございます!
にょきにょき伸びるガルアーダの塔を想像して、笑ってしまいました☆
8人の友情物語を今度こそ描けると思うと、私自身ワクワクが止まりません!
『死霊沼の聖母』は今回も、紫隠ねこさんのお力なしにはたどり着けなかったなと感じています☆
不自然に明るい世界に、ゲーム的な面白さと不穏さなどを足してくださいました……おかげでシナリオの深みがずいぶん増したと感じております。
ローグライクハーフ版の『ガルアーダの塔』も、お楽しみに……!!


(忍者福島さん)
からくりは機械と思いましたが、構造はシステムと考えると、機械はシステムを実現するための道具と考えると、構造が正解により近い気がしますね。
と、社会の歯車の一員として働いている自分が思ったのでした(笑)

(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
私も「機械」と「構造」の二択に絞り込みましたが、その後は論理的に考えるというよりは、「ヨハネさん的にはこれだろう」という発想で選んだのでした(笑)
テクア神が「そういうからくりだ」と言っていたのがまさに答えそのものになっていて、ここには「機械」というニュアンスが存在せず「そういう仕組み」という文脈なのですね。だからまさしく「からくり」は「構造」というわけです。機械という意味は含まれるかもしれないけれど、その中のごく一部、ということなのでしょう。だから「本質」ではない。
改めて考えてみましたが、奥の深い問いでした。
なお、実は導入の頃のミナは、魔法の時計入手の流れに「運命」を感じていますが、そこはスルーでお願いします(笑)


(蒙太辺土さん)
『狂える魔女のゴルジュ』リプレイ。震えながら毎週読んでいます。
今回は本当にしんどいシーンがありましたね…!
読み物としてはリプレイという形式ですが、読み味はほとんど小説。没入して読んでしまう。
それゆえにツラい!今後もぜろ先生の描くミナの物語を覚悟して見守っていきたいと思います!

(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。私自身、かなり入れ込んで書いております。歳のせいか涙腺もだいぶゆるくなっておりますので、書きながら涙し、読み返しては涙しと、いつも大変なことになっています。ここまでの回の中ではこの第8回がいちばん「来る」回でした。ほかには導入1回、2回のアレンジでミナの細やかな機転(鍵の入れ替えとか)を入れたくだりとか、第5回の闇エルフの隠れ里の緊張感も気に入っております。
ここからは、仲間との旅路になります。この先も、第8回をもしのぐ展開と感動を約束します。これからも、ミナを応援してください。


(蒙太辺土さん)
『写身の殺人者』リプレイ感想です。
「悪夢殺人」…!これキラーワード(殺人だけに)ですね〜
こういうセンスのいい惹句を見るとテンションが一段上がります!
聖騎士見習いのシグナス君に同行するメンターが魔剣(しかも人格核搭載のゴーレム?)という発想!ゴハン30杯いけますコレ。
クロ殿のライフパスめっちゃ気になります。色々反省したりもして老成し過ぎてない感じも、人間(?)の機微がうかがえて好きです。
あ、あと「アグレッシブ・アグピレオ」こちらスピンオフありますか?(笑)

(お返事:東洋夏)
感想&お褒めのお言葉をありがとうございます!
直接感想を届けていただく機会は貴重ですので、大変励みになります。
クロ先輩の属する〈おどる剣〉というのは余白の大変多い種族で、そこが魅力的だと思っています。発声するのか、それ以前にコミュニケーション手段は何なのか、そもそも自由意志があるのか……。
アランツァの世界観を損ねない程度の伴奏として、ゴーレムであるはずなのに自分の存在意義が分からず、人間くさくて、ぺらぺら喋る、そんか妙な一振がいても面白いかなと想像を逞しくして書きました。剣に導かれる少年も、ファンタジーの王道ですからね! 気に入っていただけて嬉しいです。
クロ先輩の過去についてはまだプレイヤーも知らないことが多く、これから冒険を重ね、出目を読み取って構築していきます。その時どんな真実が現れるのか、引き続き楽しみにしていただけましたら幸いです。
アグレッシブ先生につきましては……詳しくはまだ申し上げられませんが、最後の最後までお付き合いいただけましたらと。今はそれだけ意味深に記させていただきます。
それでは、改めまして、ありがとうございました!


(忍者福島さん)
ミナが未来を思い出すなんて、ぜろさんが悪夢袋を使って時を戻したのかしら?
それとも、ぜろさんがテクア神そのものだったりして。

(お返事:ぜろ)
感想ありがとうございます。
そうですね。ゲームブックのプレイヤーは全員、キャラクターを何度もスタート地点に戻させるデウスエクスマキナ神なのです。
ミナに限らず、他のゲームブックのキャラクターたちもすべて、ゲームオーバーになるたびに辿って来た行程を忘れ、繰り返し時を刻んでいます。その中で、時間を操ることができるミナだけが、この超常的な介入のことに漠然と気づいている。きっと、そういうことなのでしょう。
そんな解釈のもと、プレイヤーの力を作中の神の力に差し替えて表現しているのです。

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