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2025年10月29日水曜日

第11回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ FT新聞 No.4662

第11回【狂える魔女のゴルジュ】ゲームブックリプレイ

※ここから先はゲームブック【狂える魔女のゴルジュ】の詳細な内容に踏み込んでおりますのでご了承ください。また、大幅なアレンジが加えられている箇所がありますが、原作の選択肢をもとに構成しています。


ぜろです。
「狂える魔女のゴルジュ」リプレイです。
主人公ミナは、エルフ7姉妹の末妹。奴隷商人に売られた姉たちを探す旅を始めました。
闇神オスクリードの加護を得た魔法の時計を駆使し、「還らずの森」深くの吸血鬼の館に赴きます。
そこでミナは、姉の遺体を発見し……。
間に合わなかった後悔とともに、謎の声に導かれ、ミナは時を遡り、森へ入る前へと戻されているのでした。
そうとは知らないミナは、前回の旅を悪夢の思い出として、旅を始めます。
森の案内人、ノームのフェルを加えたことで、また違った経験を積みながら、ミナの冒険は続きます。
今回はついに、ローズ家への再突入です。


【ミナ 体力点2/4 悪夢袋6/7】<不死化傷>
金貨 3枚
歯車 1枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
【精密】


●アタック02-9 ビバイア・ローズの日記

朝を迎えた。
夢魔の悪夢に打ち勝ったボクは、それなりの睡眠を取ることができた。

今日はこれからローズ家の館へと向かう。
準備は万全にしておこう。

ボクはこのときのためにとっておいた<時もどしの回復時計>を取り出す。
柔らかな緑色の時計。ボクがそっと触れると、針が動き始める。
秒針がちりん、ちりん、と風鈴のような心地よい音色を奏でた。
時計が逆回りすると、ボクの身体がほのかに光りながら、時をさかのぼっていく。
森に入ってからこれまでに受けた傷の数々は、すべて癒された。
不死化傷もすっと消えていった。

「不死化傷まで治せるなんて、キミの魔法はつくづく規格外だな」

フェルがそんな感想をもらした。
支度をし、朝食を食べながら、フェルが話し始める。

「ローズ家についちゃ、オレもあんまり詳しくないんだけどさ。実はオレのじっちゃんが、この館で働いてたんだ」

フェルの話によれば、現当主マルティン・ローズが若い頃に住み込みで働いていたとのこと。
森の中の時計塔の建築はその頃だそうで。フェルの祖父も関わっていたようだ。
その頃の当主は、まだ吸血鬼ではなかったらしい。

「ま、ローズ家とは、因縁ってほどじゃないけど、ちょっとばかし繋がりがあるから話しとこうと思って」

マルティン・ローズか。
これまで「館の主」とか「現当主」とかいう言い方ばかりされているので、名前を聞いたのはこれが初めてだ。
吸血鬼になる前のこの人がどういう人だったのか、まったく知らないけれど、どうして吸血鬼になっちゃったんだろう。

さあ、準備を整えたら、いよいよ館へ向かおう。
黒い外観の館は、朝陽に照らされてもなお不気味だ。
その黒い壁一面に、枯れたツタが這っている。
闇エルフの隠れ里もそうだったけど、この森は、建物を黒く塗らなきゃいけないっていう決まりでもあるの?

窓はすべて、木板が打ちつけられている。
吸血鬼の弱点、太陽光を建物内に入れないためだろう。

「ローズ家に今いる人数は少ない。ローズ姓を持つのは当主とその息子だけだ。妻は早くに先立たれ、娘は家を出ているらしい。あとは使用人がいる程度だな」

さて、正面から普通に客人として入るか、裏口から入るか、だけど。
ボクの目的からしたら、やっぱり裏口からこっそり、がいいかな。
人数が少ないのなら、発見される可能性も少ないってこと。

ボクたちは人気のない館を、裏口へと回り込んだ。
雑草などは、雑だけどそれなりに刈り払われていて、使用人が仕事をしているのだろうことはわかる。

ボクたちは裏の勝手口へ行く。
当然、ドアは施錠されているが、建てつけが悪く、すき間から棒を使って簡単に内カギを開けることができた。

中の廊下も無人で薄暗い。人の気配を感じられない。
ボクたちは廊下を進む。とある部屋に入った。

その部屋は広いつくりになっていて、中央に天蓋つきのベッドがあった。すみにはクローゼットと机。

「どうやらここが息子の部屋みたいだな」

けれど、誰もいない。息子は病気だって聞いていたけど。
ボクは机から、日記を見つけた。ビバイア・ローズという人物のものだ。

「息子がたしかビバイアって名前だった。やっぱりここは息子の部屋だな」

日記を読み進める。
日記は幼少期からずっと書きつづけられたもののようで、膨大だ。
しかし最近の日記は文字が乱れ、内容も支離滅裂になってゆく。
それでも、彼の思いをつづった部分は意味をなしている。

「吸血鬼になるくらいなら、どんなに苦しくてもこのまま……」
「姉さんに会いたい。どうしているのかな」

そして5日前。日記はそこで終わっている。

「日記が書けなくなった。今いないとこを見ると、まもなく亡くなった……ってことだろうな。彼なら当主よりは話が通じると思ってたんだが」

そうだね。これではビバイアに話を聞くことはできない。
今のビバイアには。

首にかけている<跳兎の懐中時計>の、かわいらしいウサギの意匠がくるりんと踊る。
ボクはその時計を手に取った。


●アタック02-10 <跳兎の懐中時計>の力

懐中時計を動かす。悪夢袋がふたつしぼみ、ボクの身体が過去に跳躍する。
これまでは、漠然とした時間にしか戻れなかった。けど、精密な時を刻む今の時計なら、意図した時間へと跳ぶことができる。

・幼少期以前
・病気にかかる前
・死の直前

生きている時のビバイアに会うといっても、死の間際で苦しんでいるところに行っても辛いだけかな。
だからって、幼い頃まで戻るのは、戻りすぎだと思う。もしかしたらフェルのおじいさんに会えるかもしれないけど。

ボクは、病気にかかる前まで時間をさかのぼった。

<跳兎の懐中時計>は時間を越えるけど、場所は動かない。
ウサギが跳ねるオルゴール音で針が動き、目の前の風景がかちっと切り替わる。
場所は変わらず、ビバイアの部屋。風景には大きな変化は見られない。

けれど、ボクの目の前に、背の高い少年がいた。
彼には、ボクが突然現れたように見えたことだろう。あ然としている。

「今、急に現れた……? あなた、何者?」

この少年、きっとビバイアだ。
会えた。
会えたはいいけど、どうしようこの状況。
どう考えても、この館のことを聞けるシチュエーションじゃない。
未来から来た、なんて言って信じてもらえるはずもない。

なら……。

「ボクは予言者。君の未来にたちこめる影について警告に来た」
「警告だって? うさん臭いな。かといって、父さんの客じゃなさそうだし」
「君はやがて、病に倒れる。特別な聖水を求めなさい」

ビバイアの表情が険しくなった。

「何が目的だ?」

答えようと口を開く。その時、くらっとする感覚が。
時間遡行はここまでみたいだ。目の前の風景が切り替わる。
ビバイアからしたら、ボクが急に消えたように見えたことだろう。
超常的な何かを感じて、耳を貸す気になってくれればいいけれど。

そんなことを思いつつ現在に戻ると、目の前にビバイアが立っていて、今度はボクがあ然とした。

「先生、また来てくださったんですね。お会いできて光栄です」

ビバイアも、ボクの突然の登場に驚きながらも、そんなことを言い出した。
ボクにとっては、さっき見たばかりの過去のビバイアの続きだから、豹変もはなはだしい。

「あの後、犬に噛まれたことが原因で、結局病気になってしまったんです。でも先生の言葉のおかげで効き目のある聖水を手に入れられたんです」

そ、それは良かった、ね。
見ると部屋には、前になかった聖水の小瓶が、たくさん並べられていた。いろいろ試したのだろう。
聖水は吸血鬼にとっての弱点のひとつ。ボクの助言がなければ、手に入れることはできなかったに違いない。
ボクは、過去への介入が人の生死にかかわる歴史まで変えてしまったことに戦慄した。
<跳兎の懐中時計>のこの力は、あまりにも大きすぎる。

フェルにはこの状況、どんな風に見えているんだろう。
驚いた表情で固まっているフェルを見ながら、そんな風に思う。
ビバイアの生死が、歴史が変わった受け止めはできているんだろうか。

現在でビバイアと話ができることになったので、いろいろ聞くことができるようになった。
ボクは、姉たちがここに買われていったこと、取り戻すためにここまで旅をしてきたことを伝えた。

「先生のお姉さんたちが買われたとしたら、きっと私のせいです。父は、私とは違うアプローチで、私の病気を治そうとしていました。新鮮なエルフの血を欲していたんだと思います」

じゃあ、ビバイアが快癒したことで、姉たちが死ぬ必要はなくなったということなのかな?
ボクは、そんな淡い期待をしてしまう。

「わかりません。聖水の効果は、ようやく出始めたところなんです。父とはほとんど会話がないから、わかっていないかも」

そうか。あまり楽観できないことはわかった。
ビバイアに、姉たちの居場所の心あたりを尋ねる。ビバイアは答えた。

「もし館の中にいなければ、ゴルジュにいるのかも」

ゴルジュ?

ビバイアによれば、森の中にある渓谷とのこと。
陽の光が届かない場所のため、父がよく行っている場所なのだそうだ。
ビバイアは、渓谷への行き方を教えてくれた。このことは覚えておこう。

「ところで、ビバイアはこれからどうするの?」
「体がもう少し良くなったら、この館を出るつもりです。私は父の意に反して、吸血鬼になることを拒絶し続けてきました。父の影響の及ばないところで生活したい。そしてできることなら、館を出ていった姉さんに会いたい。ボラミー姉さん、今どこにいるんだろう」

ボクは、ボラミーという名前に記憶が刺激された。けれど、はっきりとは思い出せなかった。

「そう。会えるといいね」

長年離れていても、きょうだいが会うというのは特別なことなのだ。
ボクは、エナ姉、ティナ姉と、ほかの姉たち全員の顔を思い浮かべた。

ビバイアは、まだ体力を取り戻していないため、ボクたちと同行はできない。
ボクたちは、ビバイアと別れ、館の捜索を続けることにした。


●アタック02-11 姉のゆくえ

フェルに、ビバイアの部屋の出来事の感想を聞いてみた。

「会ったこともないはずのビバイアに、『先生』って呼ばれるなんてな。キミの、そのとんでもない魔法でなんかしたのはわかるけど、何をやったのか、まるでわからん」

そんな返答だった。
つまりフェルは、ビバイアが死亡して無人だった時の部屋のことは、まったく覚えていなかった。
覚えていないというよりも、そんな経験をしていない、というのが正しいのだろう。

今のフェルは、ビバイアが生きていた世界のフェルなのだ、と思った方が良いかもしれない。

気をつけないと。

過去を変えすぎると、今への影響ははかりしれなくなる。
たとえば、もしビバイアの治癒がもっと早かったり、そもそも病気にならない改変をすれば、姉たちはここに買われることがなくなるだろう。
そうなると、姉たちの命の危機はなくなるかもしれないけれど、居場所は一から探しなおしになる。

ボクたちは、地下へと降りていった。
地下はワイン蔵になっている。けどボクは、ここに秘密の拷問部屋があることを聞いて知っている。
壁を叩き、空洞を見つける。

「初めて来たとは思えない手際の良さだな……と、ここじゃないか?」

フェルが秘密の入口を見つけた。
開けるとそこは、噂どおりの拷問部屋だった。
赤黒い血の跡。生活臭。まだ新しい。

「うわ。ひでえなこりゃ」

フェルも顔をしかめてしまうひどさだ。
ここで最近血を流したのは誰か。もちろん、ボクの姉たちに決まっている。
姉たちは、ここで吸血鬼に、生きたまま血を抜かれるような、恐ろしい目に遭ったんだ。

無言で拷問部屋を出る。
フェルも、ボクにどう接していいものか、途方に暮れているようだ。

「まだ気を落とすにゃ早いぜ。姉ちゃんを見つけなきゃな」

元気づけようとしているのはわかる。
けど、あの部屋の様子では、姉たちの生存は絶望的だ、とフェルも感じ取ったに違いない。
だから、まずは姉を探すという提案は、絶望を先送りにしているだけに聞こえてしまった。

「しっかしワイン蔵とは、いい趣味してるぜ、ここの吸血鬼は」

フェルが何気にワイン樽のコックをひねる。
すぐにその声が深刻なものとなった。

「おい、これはワインじゃない。……血だ!」

嫌な予感がした。フェルと協力して樽を開ける。
悪い想像が止まらない。そうであってほしくない。

しかし、そこにあったのは冷酷な現実。樽の中に丸まっている、血だまりの中のティナ姉の遺体。
さしものフェルも、言葉も出ない。

ボクはすぐさま<跳兎の懐中時計>を手に取った。
ティナ姉を取り戻す方法は、もうこれしかない。

「おい、何をするつもりだ」

ボクはきっと、鬼気迫る表情をしていたに違いない。

「ティナ姉を取り戻してくる。……絶対に!」

強い決意を持ち、時計を動かす。
悪夢袋はあと3つ。この跳躍では2つ使う。
つまり、チャンスは一度きりだ。

跳ねる兎が動き出す。
いつまで時をさかのぼればいい?

5日前? 10日前? それよりもっと前?

5日前は、もともとビバイアが死んでいたはずの日だ。だから、エルフの生き血はそれより前に必要としていた。
闇エルフの一団がここに姉たちを送り届けて、ネルドで酒盛りをするまで。そこからボクが出発し、ここにたどり着くまで。

よし。決めた。

ボクは、10日前に跳んだ。
風景が切り替わる。ワイン蔵だけど、血のワイン樽はない。フェルもいない。
10日前のワイン蔵だ。

よかった。ティナ姉は、まだ死んでいない。
なら、どこにいるか、ボクはもう知っている。
ボクは、秘密の拷問部屋への隠し扉を開いた。

ティナ姉が、そこにいた。
縛られて、猿ぐつわをかまされ、薄汚れていたけれど、まだ、血を抜かれていない。

時間はあまりない。ボクは急いで、ティナ姉の拘束を解いた。

「ミナ? ミナなのね?!」

ティナ姉は、肌の色が変わっていても、10年以上会っていなくても、すぐにボクだとわかってくれた。
ボクは泣きながら、ティナ姉を強く抱きしめた。


次回、吸血鬼との対決のとき。


【ミナ 体力点2→4/4 悪夢袋6→5→3→1/7】
金貨 3枚
歯車 1枚
・羊皮紙
<枝分かれの未来時計>選択のやり直しが可能。
<うたかたの齢時計>一時的に年齢を変えられる。
<跳兎の懐中時計>一時的に過去に行ける。
<刻々の狭間時計>短い時間だが時を止められる。
<速撃の戦時計>すごいスピードで動ける。
<時もどしの回復時計>身体の時を戻し回復する。
【精密】


■登場人物
ミナ・ガーデンハート 主人公。双子の姉を助けるため、時を操る魔法を手に、還らずの森へと踏み込む。
エナとティナ ミナの双子の姉。ミナの双子の姉たち。還らずの森の吸血鬼の貴族に売られたという情報が。
ニナ・ガーデンハート ミナの長姉。ネグラレーナの盗賊ギルドに所属している。
モータス教授 魔法学校のミナの先生だった人物。禁断の時を操る魔法を開発する。
ボラミー 森の外縁の村にいた女剣士。確かな腕前を持つ。
ねこ人 黒ねこ人の旅人。希少種族。
ネフェルロック 闇エルフの隠れ里の長。ミナの力の源を欲している。
キーウ 初老のノーム。「還らずの森」の研究家。
ビバイア・ローズ ローズ家の病気の息子。ミナの行動で死の定めから逃れた。
フェルナンド・ウティリヌス 通称フェル。森の案内人をしているノーム。
マルティン・ローズ ローズ家の当主。吸血鬼。
オスクリード 闇神。魔法の時計を動かすには、オスクリードの加護が必要となる。
テクア からくりの神。ノームにからくりの知識を授けたとも言われる。


■作品情報
作品名:狂える魔女のゴルジュ
著者:杉本=ヨハネ
発行所・発行元:FT書房
購入はこちら
https://booth.pm/ja/items/4897513


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